メニュー
アナリストコラム

新春の正夢?悪夢? ―AIエージェントは人類の救世主か、それとも― -原田哲也-

2024年01月10日

新年あけましておめでとうございます。
せっかくの新春なので、未来を想像してみたい。2023年は2022年11月にOpen AIが発表したChatGPTの衝撃に覆われた1年であった。皆さんも仕事やプライベートで利用されていると思うが、問題は色々指摘されているものの便利だし使い方によっては大幅に効率アップに繋がる実感をお持ちだろう。ChatGPTがもたらしたものは何だったのかというと、機能面はもちろんだが、今までのAIは専門家の道具であり、普通の人々には手の届かない利器であった。しかしChatGPTとか生成AIは我々一般大衆も楽々使える、つまりAIの大衆化が始まったのである。私は意味合いが逆になるかもしれないがAIの「パンドラの箱が開いた」と捉えている。

OpenAIではAGI(汎用人工知能)の研究を進めているようだ。ChatGPTでも最新バージョンではマルチモーダルなので、汎用的といえばそうかもしれないが、現在研究が進められているのはもっと本質的なAGIである。

WIRED恒例の「THE WORLD IN 2024」では世界は2024年、知性の飛躍的な進化(AGI?の登場)を目撃することになると刺激的なタイトルが躍る。

AGIは何か?については多くの専門家の間でも意見が一致していない。そうした中GoogleDeepMindの研究チームはAGIの定義についての論文を発表した。

大雑把に言えばAGIとは様々なタスクにおいて人間に匹敵する(あるいは勝る)人工知能ということになる。拍子抜けである。

そこで、私なりにAGIを従来のAIとの比較しながらAGIの特長を語ると以下のようになる。従来のAIとAGIとの違いを端的に表せば、単一のタスクをこなすか様々なタスクをこなすことができるか、この点が大きな違いである。また人間がAIに学習データを与えるか、AI自身が自己学習するかの違いもある。

Google DeepMindの研究チームではAGIの5段階レベルを提案し解説している。
① 新興(ChatGPTやBardなど)
② 有能
③ 専門家
④ 名人
⑤ 超人間(他人の思考の解読や未来予測、動物との会話など人間が全くできないタスクを含む幅広いタスクをどの人間よりもうまく実行する)

AGIの現在位置は①であるという。

今年2024年は②の有能なAGIが登場するのであろうか。

WIREDではAI次世代モデルが2024年に登場し、一部のビジネスを破壊し、全く新しいビジネスを生み出すはずだと予想している。

さて、その後だが、ビルゲイツが今後5年以内に一人ひとりが自分専用のAIエージェント(パーソナルアシスタント)を持つようになると言っている。

彼は述べている。
「コンピュータで何かタスクを実行するには使用するアプリをデバイスに指定する必要がある。Microsoft wordやGoogleDocsを使えば企画書を作成するのは可能だ。しかしそれらはメールの送信や自撮り写真の共有、データ分析、チケット購入といったタスクをこなすことはできない。

またどんなに優れているサイトでもユーザの仕事や私生活、趣味などについて完全に理解することは出来ず、これらの細かい個人情報を使ってユーザのために何かをする能力は限られている。現在では親しい友人にしかできないことだ。否、友人だって詳しくはわからない。

しかし、今後5年以内に状況は完全に変わる。Windows、macOS またはiOS、Android?この問いは今日意味ある問いに聞こえるが、5年後にはAIエージェントがOSやプラットフォームとして機能するため気にする人はいなくなる。OutlookかGmailかも気にする人はいなくなる。

つまりタスクごとにアプリを使い分け必要はなくなる。
タスクごとに異なるアプリを使用する必要はなくなる。オンラインに接続している人は誰でも今日のテクノロジーを遥かに超えたAIを搭載したパーソナルアシスタント(AIエージェント)を利用できるようになるだろう。

AIの最も刺激的な影響はほとんどの人にとって高価なサービスを民主化することだ。特にヘルスケア、教育、エンターテイメント、ショッピングという分野で大きな変革が起きるだろう。

ここで実際の未来における日常のAIエージェント(デコピン「D」と命名)との会話を再現してみよう。

私:おはようデコピン、今日の予定は?
D;10時から〇〇と商談のために△へ行く予定です

私:△まで家から何分ぐらいかかりそう?
D:凡そ30分です

私:それではウーバー(自動運転?)を9;25に呼んでおいて
  それから〇〇の商談に関して頭に入れておくべきポイントを整理したメモをお願い

私:今日の天気は?
D:晴れで、最高気温は25度の予報です。

D;今朝がたの肝臓の数値が少し高くなっています。連日のアルコールの影響だと思われます。少し注意をしたほうが良いと思います。
  それから定期健診の時期が近づいています。予約を入れておきますか?

私:それじゃ来週のスケージュールの空いている日に病院に予約を入れておいて

D;今日はお友達の□□さんの誕生日ですが何かメッセージをお送りしますか
私:この間デコピンが紹介してくれた本に良い言葉があったよね、ワインと一緒にアレを送っておいて

ざっとこんな感じになるのだろうか。

ビル・ゲイツはAIエージェントとの通信手段について眼鏡、ペンダント、ピン、ホログラムなどと書いているが、イヤホンが本命だと感じているようだ。イヤホンだとして通訳もやってくれると助かるけどね。それからビルはAIエージェントにセラピストの役割も期待しているようだ。

先日、日経新聞を読んでいたら英アームのレネCEOも「汎用AIの時代になるともっと多くのエージェントが現れるだろう。人の代わりに意思決定をしてくれるようなモノが家庭やオフィスに多く存在する」と語っていた。

いよいよ、次世代のAIというかAGIの時代が始まろうとしているのだろう。生活も、仕事も、教育も、ヘルスケアもあらゆることが大きく変わるであろう。

しかし、AIエージェント(AGIの④とか⑤段階?)を人間一人ひとりが持つようになると、人の頭脳は次第に退化していくのではないか、そしてAIに支配されるようになるのではないかと不安になる。正月の悪夢か正夢か。

(1月9日発行のレポートより転載)

アナリストコラム一覧 TOPへ戻る