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アナリストコラム

新NISAが日本を滅ぼす -藤根靖昊-

2024年06月18日

先週の米国市場は、ダウ平均は上値が重く推移する中、ナスダックやS&P500が最高値を更新しました。ナスダックは17日まで6日続伸です。アップルやエヌビディアなどAI関連への期待は依然として強い様相です。
12日発表の米消費者物価指数(5月)は前年同月比+3.3%と市場予想(+3.4%)を下回りました。前月比では横ばいとなりインフレ上昇に歯止めがかかりつつあるようです。

しかし、FRBは11-12日のFOMCにおいて、インフレ予測(PCE物価指数)を引き上げ(24年末2.4%→2.6%)、政策金利見通しをタカ派に修正しました。24年末4.6%→5.1%、25年末3.9%→4.1%。これにより24年内の利下げ回数(見通し)は3回から1回と減少しました。ただし、市場の予想(2回への修正)よりもタカ派であったのにもかかわらず、米長期金利は低下傾向をたどり、ダウ平均への負のインパクトがほとんど生じませんでした。これはパウエル議長が同日の会見において「保守的な見積もりに過ぎない」と述べるなど市場の不安を和らげたためとされています。

FOMC後に発表された指標は景気減速(13日:米卸売物価指数、新規失業保険申請件数、14日:ミシガン大学消費者態度指数)を示すものが多かったが、17日発表のNY連銀製造業景況感指数(6月)は市場予想を上回りました。今後も経済指標の好悪とそれに対する解釈(利下げ期待の高まり、後退)の中で市場は揺れ動くものと考えます。それよりも現在のハイテク人気に対する評価(どこまで正当化されるのか)が中期的には影響を与えそうです。

13-14日の日銀金融政策決定会合では、長期国債の買い入れを減額する方針が決定されました。ただし、具体的な計画は次回の会合(7/30-31)に持ち越されました。

日米の金融当局の会合が市場に大きなインパクトを生じさせなかった一方で、フランスの解散総選挙の決定が波乱要因となっています。マクロン大統領は欧州議会選挙(6/9)で与党連合が極右政党(国民連合)に大差で敗北したことを受けて、解散総選挙を決めました。6月30日(第1回)、7月7日(決選)に投票が行われます。
これは“非常に危険な賭け”と見られています。欧州議会選挙における得票率は国民連合が31.3%に対して与党連合はわずか14.6%でした。総選挙で国民連合が第1党となれば同党から首相が選出され、ねじれが極大し政策実行が一層困難になると見られます。またポピュリスト政党が躍進することで財政規律が低下することも指摘されます。フランス国債の利回りは上昇し、財政危機も懸念されている。ユーロの中軸国であるフランスが揺らぐことでユーロ安も生じています。フランス総選挙の行方に市場の注目が集まりそうです。

フランス総選挙よりも(中長期で)大きな火種となりそうなのが新NISAです。財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況によれば、国内の投資信託や資産運用会社による対外投資は5月に1兆3719億円の買い越しとなり単月の過去最高を更新しました。1-5月累計の買い越し額は5兆6388億円となり、既に23年通年の4兆5454億円を上回っています。年間では単純計算では13.5兆円が見込まれます。23年の貿易収支の赤字額が5.9兆円ですから為替に対するインパクトが甚大であることが伺えます。円安の進行は輸入物価の上昇を通じてコストプッシュ型のインフレを齎し、国内金利の上昇を促します。金利上昇は既発行国債の評価損拡大や国債の利払い費の増加等によって国家財政にも悪影響を齎します。また家計の金融資産が国外に流出することで、日本国債の信用力にも大きく影響します。
このままだとかなり拙いです。是非、新NISAでは日本株に投資してください。

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