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アナリストコラム

米国利下げでも円安が続く理由 -藤根靖昊-

2024年07月09日

本日(9日)、国内株式市場が急騰しました。前週末の米雇用統計、あるいは都知事選やフランス下院選挙等の結果は昨日に、既に織り込まれていると考えられるだけに、別の要因と思われます。前日(8日)の米国市場も大きな動きはありませんでした。

為替が円安気味に動いていることが日本株を押し上げ要因として指摘されています。これは昨日(8日)に財務省が発表した「対外・対内証券売買契約等の状況」が影響していると考えられます。国内の投資運用会社による海外株・ファンドの買越額は6月単月で1兆5億円、1-6月累計では6兆1639億円と月間1兆円ペースが続いています。新NISAの積立枠は海外株式等に投資するファンドが主体と考えられるだけに同様の傾向が来月以降も続くことが指摘されます。貿易赤字を上回る為替インパクト(=円安要因)が継続することが予想されます。さらに投資収益も海外に再投資される可能性が強く、円買い(還流)が発生しにくい構造が指摘されています。今後、米国の利下げ開始が行われて日米金利差が縮小傾向に向かうとしても(縮小がかなり進まない限りは)円安傾向が続く可能性も考えられます。株式市場は製造業等のグローバル・輸出関連株へのメリットを再度織り込む局面のように見受けられます。

米国の利下げはどうでしょうか? 7月1日に4.4%台にあった米10年国債利回りは8日には4.28%に低下しています。ISM製造業・非製造業景況感指数が弱含んでいることや、5日発表の米雇用統計(6月)において非農業部門雇用者数の4月・5月分が下方修正されたことや、失業率の上昇(4.0%→4.1%)など経済指標の弱含み傾向が顕在化していることが米国金利に表れつつあるようです。こうした環境を鑑みて市場は、FRBが9月のFOMC(9/17-18)において利下げを開始するとの見方が有力とされています。

今週は、11日:米消費者物価指数(6月)、12日米生産者物価指数(6月)、ミシガン大学消費者態度指数(7月)などが予定されています。こうした指標によって一時的にドル安・円高や米国株が下押しする局面があっても、円安基調は変わらず、目先的には日本株は強含みに推移するかもしれません。
しかし、円安によるデメリットとして、国内景気の悪化(特に消費関連)が顕在化するタイミングでは大きな逆回転が生じると考えています。ここからは国内経済指標に注意を高める局面かもしれません。

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