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カープよありがとう、東大の優勝より厳しいと感じていた -Forever Young-

2016年09月16日

昔、古井戸というフォークデュオの「金とこねさえあれば僕の思いどおり、金とこねさえあれば嘘も本当になーる、大きくて強い者にくっつけば、もう怖いものなんかー、ないさー」というハードな歌があった。古いカセットテープを引っ張り出し、今でもたまに聞いている。聞くとこの歌にジャイアンツがいつも重なる。シーズンオフに実績のある大物選手を金任せになりふり構わず補強する。そして、次のシーズンに備える。当然、アマチュアの有名選手も待遇がよさそうで選手として箔が付きそうなジャイアンツブランドを目指す。

ジャイアンツはシーズン初めには優勝ができる戦力を必ず備えている。それに比べカープはいつも厳しい。秋のドラフトでは中央球界であまり聞いたことのない選手を上位指名する。採用で不利な立場にあることが否めぬ中、有望選手探しにゆかりのある西日本地域を中心にスカウト陣が全国津々浦々を歩き回る。成長株探しに選手の若い内から目を付け時間をかける。こうした展開の中から他とぶつからぬよう指名した選手を伝統の猛練習で確り育て上げる。しかし、レギュラーとして輝き始めると他球団にもっていかれる。シーズン初めには戦力がダウンしているという状況が長らく続いた。

カープファンになってから半世紀近くになる。筆者の中では最も長続きしている。子供の頃、回りの男の子はほとんどがジャイアンツの野球帽をかぶっていた。天邪鬼だったこともあり、町のスポーツ店で「H」のマークが入った地味な野球帽も見つけた。当時は球界のお荷物と言われるほど弱かった。親に金もこねもなく落ちこぼれた様子がなんとなく筆者と重なった。高校時代、赤ヘルになっての初優勝には感動した。まわりとは違うものに早くから目を付け成功したような何とも言えぬ高揚感が沸いたことを覚えている。以降は受験勉強中でもカープ戦はラジオのスイッチを捻るほど応援に熱が入った。カープが東京に遠征してくると、暗いと思われるであろうが、一人で人気のない対ヤクルト戦を神宮球場の外野スタンドで仕事帰りによく観戦した。ファンとしては筋金入りである。

フリーエージェント制が始まって以降7回目の優勝は遠ざかるばかりだと思えた。しかし、ここ数年何度かAクラス入りしたことで少し近づいた感があった。けれど、「やはりお前もか?」という感じで前田健太が海を渡った。年間15勝がなくなる。期待の大瀬良も調子が悪い。助っ人長距離砲のエルドレッドが怪我で出遅れる。今年はもう無理だ。東大の大学野球優勝より難しい。死ぬまで再度優勝を見ることはないと思った。ところが、苦手な交流戦を好成績で乗り越えてからは波に乗り、あっという間に優勝してしまった。先週土曜日は歩き回って有望株を探し出し、困難があっても生え抜きの選手で基本は戦い抜くという努力を地道に繰り返すという持たない球団が築き上げたビジネスモデルが世に通じた瞬間であった。カープよ、持たない物に希望と勇気を与えてくれありがとう。

さて、次はクライマックスシリーズ。勝率5割未満で参戦したら怒り狂いそうだが、DeNAベイスターズが出てきたら少し気味が悪い。横浜に気を付け、同シリーズを勝ち抜き日本シリーズに進んで欲しいと願わずにはいられない。   

Written by Forever Young

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