メニュー
TIW Cafe

フェアリー・ゴッド・ファーザーへの”お賽銭” -wildernesswolf-

2015年12月25日

 年の瀬も迫った土曜日の午後、或るビルの駐車場のコンクリートのちょっと段差のある場所に項垂れたように座り込んでいる初老の男性が居た。眠っているのか、動けなくなっているのか。恐らくはホームレスなんだろう。昼間とはいえ肌寒い気候の中で居たたまれない気持になった。
最初はそう感じながらも横を通り過ぎてしまったのだが、1時間後に同じ場所を通るとやはり項垂れて座っている。このまま行き過ぎてはいけないような衝動にかられて、自動販売機からお茶のペットボトル(温)を購入し、千円札を1枚折り畳んだ。

そして男性に声をかけた。
「おっちゃん、おっちゃん。温かいお茶でも飲んで元気だしなよ」
そういって、お茶と折りたたんだ千円札を男性の手に握らせた。
男性は、少し眠っていたのかもしれない。でも、千円札に気づくとこちらの顔を見て、「すまんな」と言った。
「じゃあ」といって立ち去ると背中にもう一度「すまんな」という声が聞こえた。

映画「シンデレラ」(実写版)の中で、継母や姉たちにドレスを引き裂かれ、舞踏会にいけずに悲しみに暮れるシンデレラに、乞食の老婆が「何か食べるものをおくれ」と声を掛ける。
それが、実はフェアリー・ゴッド・マザーであったのだが・・・・。

その男性は実は、フェアリー・ゴッド・ファーザーかもしれない。もちろん、そんな虫のいい御伽噺を期待しているわけではない。ただ、傍観者になることは止めなければならないと思う。少し話が飛躍するかもしれないが、子供のイジメの問題だって、虐める側だけでなく傍観者が作り出しているものだ。その子供達の行動は大人を模倣しているものにしか過ぎない。社会の揉め事や困っている人に対して、傍観者という知らん顔を決め込んでいる大人たちが子供のイジメを助長しているとも言える。

まもなく、新年が訪れるが、初詣でお参りするときには「世界の人々が戦争も無く、幸福に暮らせますように」といつも願いを込める。
神様は未だに其の願いを適えてはくれそうにない。それならば、フェアリー・ゴッド・ファーザーに”お賽銭”を出すほうが世の中を良くしてくれるはず、と思うのは勘違いだろうか。
良い新年をお迎えください。

wildernesswolf

TIW Cafe 一覧 TOPへ戻る