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蘇ったワールドボーイ、昔の上司に感謝 -Forever Young-

2015年11月20日

 「それ4,000円程度で売れますよ。」とA君が僕に向かって興奮したように叫ぶ。廃棄物処理センターへ運ぼうと思っていたラジオを指してだ。隣にあったCD機能のみが故障したCDラジカセに関して聞くと「残しても何の意味もない」とあっさり言う。東京の狭いマンションで使えなくなったパソコン、プリンター、FAX複合機など、主に電化製品を120キロ程度離れた実家に車で移動する際に、もうずいぶん前から時々運び込んでいた。おかげで、田舎の僕の部屋は電化製品を中心とする不燃ごみで溢れていた。さすがに足の踏み場もない。先日、処分に踏み切ったが、捨てるべきか迷う物もありA君を呼んだ。

ナショナルのワールドボーイ。中学生の時に貯めてあったお年玉で買った。初めて自分で購入した電化製品だ。ラジカセが主流になる直前だったので、ラジオとしてはタイマーとか色々な機能が搭載されており高付加価値でスタイルも洗練されている。いつしか、コードが見当たらなくなったことに加え、ラジカセを主に使うようになったので使わなくなった。でも格好が良く、場所もとらないのでなかなか捨て切れなかった。A君が別の製品のコードを見つけこのラジオに繋ぐ。見事に音を発する。まだ生きている。FM放送にチャネルを合わせる。軽快なサウンドが流れてくる。深夜放送を聞きながら勉強に励んだ当時が蘇る。これは捨てられない、宝物だと思ってワールドボーイを磨き上げた。
 実はA君とは僕の妹の義理の弟。製造業育ちで工場現場に詳しい。技術屋で車が大好き。電気や機械に強く、スポーツや音楽関係の趣味が僕と結構似通っている。僕は仕事で「ものづくり業界」をカバーしているが財務情報や事業ポートフォリオ、戦略等に関する理解は容易にできても、事務系育ちであり、工場現場の改善の話しや製品の細部の話になるとなかなかイメージがわかないことが多い。こういう時には彼に聞くようにしている。そんなことで廃品整理に巻き込んでしまった次第だが、一方で彼から金融関係の話で質問を受けるとわかり易く説明してあげる。どうやらお互い補完関係になっているようだ。

昔、バイサイドからセルサイドに転職し、ボンド(債券)の買い手から売り手に立場が変った時に当時の外国人の上司からアドバイスを受けたことがある。出身母体のニーズしかわからず出身業界向けのみのセールスに止まり、所属先の営業プロダクトとの関係から営業に限界を感じていた僕に対し、入り込みたい業界、道に精通した人にくっつくのだと諭されたことがある。その後、これが良い教訓になっている。おかげで貴重な宝物を捨てなくてすんだ。今でも感謝である。

Written by Forever Young

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