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LOVE進化論 -Cranberry Jam-

2015年10月02日

チンパンジーは恋をしません。特定の異性に愛情を抱いたり、執着したり、嫉妬したりしません。チンパンジーのオスは、子育てをしません。そもそもオスには、「自分の子」という概念がありません。オスは、オスだけの群れで行動し、集団でメスを探します。一方、発情期のメスは、オスの群れに出会うと出来るだけ多くのオスと交尾をします。そのためオスにとっては、どれが自分の子供か分からないのです。オスとメスが関わるのは、繁殖期のみです。子育ては、メスだけによって行われます。

1パーセント。人間とチンパンジーの遺伝子の違いです。わずか1パーセントしか差がありません。人間とチンパンジーは、遠い昔へ遡ると共通の祖先を持っています。今から700万年前、地球の環境が激変しました。森で暮らしていた猿が、森を飛び出してサバンナで暮らすようになりました。森に残った猿がチンパンジーとなり、サバンナへ出た猿がヒトへと進化しました。森で暮らしていたヒトの祖先は、チンパンジーと同じような繁殖方法をとっていたと考えられています。

サバンナは、危険がいっぱいでした。森と違って外敵が多く、せっかく産まれた子供が肉食獣に襲われることがありました。そのため、オスとメスが共同で子育てをする必要がありました。男女が協力して子供を育て、家族を作るようになりました。家族を維持するには、特定の男女が長期的な関係を結ばなければなりません。ヒトは、サバンナの厳しい環境を生き抜いて進化を遂げる過程で、愛情や執着心や嫉妬など豊かで複雑な感情を持つようになりました。恋愛感情は、家族の繋がりを補強するために生まれたのかもしれません。

恋愛は、人間にとって最も重要な活動の1つです。恋に落ちて絆を育み家族を作ることで、DNAを未来へと受け継ぐからです。恋をすると、尾状核と腹側被蓋野が活発になります。これは脳の奥深くの原始的な領域であり、のどの渇きや空腹を感じる部分でもあります。つまり、恋愛することは脳の高次機能ではなく、むしろ本能に近いと言えます。

逆に失恋をすることも、重い意味を持ちます。愛する人を失うと同時に、遺伝子を残すチャンスをも失うからです。失恋すると、脳の前部島皮質が顕著に活性化します。これは、肉体の痛みを感じる部分です。つまり失恋によって、身体が痛めつけられると言えます。失恋で痛みを感じるのは、同じ悲劇を繰り返さないよう学ぶためかもしれません。

ヒトはなぜ二足歩行へと進化したのでしょうか。森からサバンナへと飛び出した私たちの祖先は、子育てのリスクを軽減するために家族を構成するようになりました。家族を作る過程で、メスは複数のオスの中からパートナーを選別します。オスは遺伝子を残すためにはメスの気を引かなければなりません。食べ物を与えて求愛するオスもいたことでしょう。もしも、片手だけでリンゴを3つ持ってきたオスと、両手いっぱいにリンゴを6つ持ってきたオスが目の前に現れたら、メスはどちらのオスを選ぶでしょうか。両手でプレゼントを抱えてきたオスだけが求愛に成功し、遺伝子を残すことができたとしたら・・・。

人間は恋をします。特定の異性に愛情を抱いたり、執着したり、嫉妬したりします。家族を構成し、協力しあって子育てをします。私たち人間は、進化の過程で恋する奇跡を知りました。恋をすることによって、豊かな感情を持つようになりました。昔の人は、こんな歌を詠んでいます。

「恋せずば 人は心も無からまし 物のあはれも これよりぞ知る」

Written by Cranberry Jam

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