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ロンドンへの手紙 - Forever Young-

2015年03月06日

年にたかだか2回だが手紙を書く機会が必ずある。3月と12月で、ロンドンで暮らす友人、通称スーこと、スーザン宛である。それは、彼女が3月生まれであり、そして12月はクリマスという事情による。お誕生日カード、クリスマスカードに下手な英語、文法は一部不確かだけれど、手文字で書いた手紙を同封する。僕の方も誕生日とクリスマスに彼女からのレターを必ず貰う。遠方から誕生日当日に必ず届くのでいつもびっくりする。スーは昔、ロンドンで3年間一緒に働いた同僚だ。帰国してから、もう20年以上スーと手紙でのやり取りが続く。もう僕の暮らしの中では年中行事になってしまった。

スーへ手紙を書く。また、ロンドン空気が感じられるペーパーの表裏にびっしりと書き込まれた彼女の手紙を読むにつけ、彼女と共に働いた当事のことをよく想いだす。昔勤めた会社の現法への赴任直後のことであった。僕は英語にはある程度の自信はあったのだが、来客と英語で話しをしているのを横で聞かれていて、「全然、話がかみ合っていない」と彼女に言われ、鼻っ柱をへし折られて、相当のショックを受けた。しかし、その後、何とか立ち直り挽回、数カ月後に「漸くかみ合ってきたわね」と合格点を貰ったことが今でも強烈な記憶として残る。向こうの人は本当にはっきりと物を言う。

手紙を書いているといってもたいしたことを書いているわけではない。「ハロー マイ フレンド!」で始まり、最近日本で起きていることとか、仕事の状況とか、一度、ご夫婦で日本へ観光に来た折に数時間遊んでもらった子供の成長ぶりとかたわいもないことだ。最近、彼女の方からの手紙は孫の話題が多くなってきた。そして、当事一緒の時間を過ごした、共通の仕事仲間の近況を問われることが多くなっている。とすると、今でも文通が続いているのは僕くらいなのかということになる。少し自分が誇らしくも思えてくる。一時、僕の怠慢で彼女の誕生日に間に合わなくなったことがきっかけで、何かの際に聞いていたアドレス宛への電子メールに切り替えた。そうしたらやがて彼女からのレターも電子メールに変わった。その時、何かなんとも言えない寂しさを感じた。

手紙は書く前に充分自分の考えをまとめておく必要がある。一方で電子メールは瞬時に送れることに加え、思いつくがまま、だらだら書いても簡単に消去、訂正が利く。送る側にはとても便利だ。しかし、受け取る側としてはあまりに味気なく感じる。手文字に込められた喜怒哀楽や選ばれた封筒、カードやペーパーの一体からの相手の気持ちがよく伝わってこない。電子メールは心に残ってもすぐに捨ててしまうことが多いのに手紙は印象に残ったものは心の財産としてしまっておくことが多い。そこで、手紙に戻したら、通じることがあったようで彼女からの返信も手紙に変った。通信手段の発達でとても便利になった。しかし、何事においても進化の一方で失いたくない、失ってはならないものが必ずある。彼女の誕生日まであとわずか。明日はこんなことを思いながら手紙を書くことになるだろう。

Written by Forever Young

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