一番面白いと言われる夏の高校野球ベスト8の戦いが甲子園で始まった。ゲリラ豪雨が大災害をもたらすなど、異常気象多発の昨今だが、甲子園大会においても異常気象が発生している。一回戦敗退が通常の北信越5県の代表の内4校がベスト16まで勝ち進んだ。そしてベスト16の半分を北信越勢とかつては弱かった東北勢が占めた。猛打で敦賀気比(福井県)が勝ち上がっている、ベスト8には北信越勢が2校残り、4校が北信越勢と東北勢である、などを踏まえると最早や組み合わせのアヤなどとは言えない。
北海道や東北の高校が決勝戦まで駒を進めることが珍しくなくなった。今年の北信越の活躍で冬でも練習が積める南が強く、雪の深い北が弱いという南高北低という神話は崩れ去った。なぜ北が強くなったのか。ベスト8に残った青森、福島、新潟、福井の4県代表校のベンチ入りメンバーは72人だ。内2/3の42名が県外中学出身者である。想定どおりだが、外国人部隊が甲子園出場に貢献している。とはいえ、1/3は県内中学出身者である。外国人部隊の存在が県内出身者のレベルを引き上げ甲子園での躍進に繋がっている。また、4校ともに私学である。厳しい冬でも恵まれた施設で基礎能力の強化が進められていることは容易に想像がつく。これが猛打を生むのだろう。加えて、近年の暖冬も早い段階からのグランドでの本格練習や強化試合の追い風になっている。さらには、先行した東北では地元に甲子園に常連校が生まれ、近隣校を刺激し地域全体としてレベルの底上げが図れているという好循環が窺われる。
中学有力選手が甲子園出場のハードルの低い県や高校を目指すという流れは変わらない。また、私学は有力選手を全国から集める。北越勢の躍進は一時的な現象に終わらないだろう。もはや、太田幸司のような選手は現れない。甘く端正なマスクの無名校(青森県三沢高校)のエースが四国の強豪、松山商業を相手に引き分け再試合で2回の決勝戦を一人で投げぬく。これぞ高校野球、女の子をとりこにするなんてシーンはもう見られない。県立高校が甲子園で大活躍するなんてあり得ない。甲子園は特定私学の名を馳せる場となり、プロ選手育成下部組織のお祭りになってしまうのではと嘆く声もあろう。
しかし、そうは思わない。今年の青森大会決勝では県トップの進学校県立青森高校が9回表に2点を上げ、100%外国人部隊の甲子園常連校八戸学院光星を2点差にまで追い詰めた。門戸は狭いが甲子園への可能性はある。野球は真の全国区のスポーツになったのだ。各県代表の力が拮抗し、甲子園は初戦からレベルの高い試合が見られる時代となったのだ。また、全国津々浦々への裾野の広がりから、岩手県地元出身でプロ入りした大谷選手のような異次元のプレー、活躍ができる選手が現れる土壌になったのだ。夢のあるわくわくする時代になったのだと今年の北信越勢の甲子園での活躍を見て思わずにはいられない。明日からの戦いが楽しみだ。
Written by Forever Young