先日、日本画専門である山種美術館(恵比寿)の展覧会「百花繚乱—花言葉・花図鑑—」を紹介している記事(カラー写真つき)が目にとまった。江戸時代から1980年まで幅広い年代の作品を60点あまり展示されてるようだ。柔らかいタッチで描かれた花の絵などが紹介されており、西洋画とは一味違う魅力に興味がわいたので鑑賞に行ってみた。
実際に絵を間近で見てみると、日本画の構図には無駄が無く、表現に様々な工夫が施されており、現代の感覚から見ても新鮮味があった。例えば、絵から少し距離をとって全体を見るとしっかりと描かれているように見えるのに、近づいて見ると花の輪郭部分だけは曖昧にぼかされてる。輪郭のぼかしにより、花の柔らかさや絵の奥行きが出ているように感じた。一枚の屏風に春夏秋冬の順序で季節の花々が描き分けられている屏風絵にも目を惹かれた。また時代が近年になるにつれ、背景の色など細部にも工夫が凝らしてあるのも興味深かった。個人的な好みでは、山口蓬春の「梅雨晴」が良かった。水を含んだ紫陽花がしっとりとするイメージまで伝わってきて、絵そのものの美しさだけでなく、絵に込められたイメージが伝わるのには新鮮な驚きがあった。三次元の実体のある物を二次元に落とし込むのが静物画であるが、作品によっては目の前に実物が存在するよりも絵画から放たれるイメージの方が強く感じたのは不思議な感覚だった。
美術館では一枚一枚の絵をジーッと鑑賞すると疲れてしまうことがあるが、今回は力を抜いてボーッと見ていたのであまり疲れなかった。ボーッと見る方がむしろイメージが伝わってくる感じがしたからだ。もしかすると日本画の鑑賞方法の一つかもしれない。
油絵などハッキリとした画風である西洋画は完成度の高さを感じると反面、主張の強さも感じる。一方で日本画は、”和”の精神なのか、全体の完成度を伝える方向性のように感じた。”ハッキリ”に対して”ぼんやりと全体的に”というのは西洋と日本の価値観の差の表れでもあるのかもしれない。そのような仮説をたててみると、ルノアールなどの印象派が日本で人気がある理由が説明できるのではないかと思う。日本画とあわせて印象派の作品も一緒に出展すれば、印象派目当ての人も多数訪れるだろうし、両者を直接比較対照できるので、おもしろい企画展になると思った。日本画の良さも、改めてより多くの人に知ってもらえるだろう。
現在開催中の展示会で個人的に興味があるのは、フェルメールセンター銀座の「あっぱれ北斎!光の王国展」である。葛飾北斎の絵を、当時のままの色彩に復元したものが見られる。浮世絵は天然顔料を使うので色が経年変化するが、最新のデジタル印刷技術を駆使して忠実に色を再現したのである。しかも原寸版だけでなく、拡大版も展示される。浮世絵は構図が力強く立体感があるので、見応えがありそうだ。会期が5/31までであまり日が残っていないが、時間を作って是非行ってみたい。
Written by 素人文化論