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柔道の醍醐味について考える -久しぶりに柔道がしたい-

2012年12月21日

先日、国際柔道連盟(IJF)から、来年2月の国際大会から試験的に導入される新ルールとして、足取りの全面禁止などの発表があった。
具体的には、「双手刈り」や、「肩車」などが使用できなくなる、ということである。
他にも、一本の価値を高める方向性として、確かな衝撃を与える技で、相手の背中に完全に畳が着いた時を一本と認めたり、或いは延長戦に関しても、決着がつくまで旗判定を廃止する上に、寝技でポイントとなる時間を各5秒縮めるなど、以前と比べて勝敗が明確に分かれるようだ。

前回のオリンピックに見られた様な、レスリングで言う、”タックル”を多用してポイントを取る柔道がスタンダードとなってしまい、防御姿勢の立ち姿もお尻を後ろに突き出すレスリングのスタイルになってしまった現在の柔道と、レスリングの差別化を図ることが狙いにあるのではないか、と筆者は推測する。
一部では使用される技術がレスリングにかなり近づいてしまった事から、柔道の事をジャケット・レスリングと揶揄される風潮があるようである。

以前、筆者が米国に滞在した際、某大学の柔道部で練習させて貰っていた事がある。
レスリング技に近い技術体系を得意とする人達がおり、確かに強かったが、私を含めて、練習中に彼らに幾ら投げられても、何か釈然としない雰囲気が現地でもあった。
恐らく、目的が勝つことという姿勢と、何度投げられても柔道技を確りと身につけていくという姿勢は、自ずと目指している方向性が違っていたのではないか、と推測する。

長く鍛錬出来る為の心構えだと考えているが、現地の先生が柔道にはリスペクトが必要だと仰っていたのを良く覚えている。
筆者としては、柔道で勝つ事とは、柔道をリスペクトしつつ地道に身につけた技で勝負した結果、得られるべきだと思う。
数年前、筆者は講道館9段の大先生とお話しする機会があったが、柔道のスポーツ化に対して大層憂慮されていたのを覚えている。
例えば、昔の講道館だと、前述のレスリング的な防御姿勢を取ると、即座に先輩から尻を蹴られたそうで、いい加減な事は許されない大変厳しい修業だったようだ。

柔道に限らず、各国の代表選手が出て来る世界大会となると、ルールを守って勝てばOK、という姿勢が当然出て来るものだと考えるが、筆者としては今回のルール改正が適用された暁には、勝つにせよ、負けるにせよ、柔道の醍醐味である一発逆転にかける技の攻防へと是非転換して欲しい。柔道界のその姿勢が、若い人達の興味を持たせ、今後のオリンピックを支える人材となってくれるのだろうし、引いては柔道文化を存続させるものと考える。

Written by 久しぶりに柔道がしたい


 

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