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ドヴォルザークのコンサート -Rilakkuma-

2012年01月12日

オーチャードホールでドヴォルザークを聴いた。
スラブ民族の気高く情熱的な音律が、私の今年の決意を強くした。

この素晴らしい演奏は、チェコ人の指揮者、81歳の大家ラドミル・エリュシュカによる指揮だった。
彼はチェコでは有名であるけれど、世界に出たのは遅かった。
プラハの春、ビロード革命を経てチェコ・スロバキアが89年に民主化された時、大家に西欧への扉は開かれたが、オーケストラを維持するためには、結局スポンサーである西側の指揮者を迎え入れる必要性があり、世に知れ渡る指揮者とはならなかった。その演奏は、決して劇的に盛り上げることは無く、しかしリズムを、まるで固い主張をしているかのようにしっかりと刻む。熱く、しみじみとした、新世界だった。

インタビューの中で、今回演奏したNHK交響楽団を、大家は絶賛している。
テクニックと、とりわけ各楽器の音やリズムが確実に揃う正確さについて。
確かに世界のオーケストラに比して、N響の音のそろえ方、まとめ方は卓越している。始まりも終わりもぴったりと、息が合う。何がそうさせるのだろうか?

阿吽の呼吸、間の美学、沈黙が意味を持つこと−。
日本文化では、音の無い瞬間、形の無いもの、言われなかった言葉、描かれなかった白い背景、無の空間が意味を持つ。
無によって有を表現する独特さ。人を思いやる、形の見えない心。
決して言葉に出されることが無い、優しい心配りが日常的にあふれている国。

そう感じながら、コンサートホールに響く、音の繋がりに心を傾けた。
悲しいまでに正確に揃った音がある。やがてその音の粒が繋がり、音楽になる。美しいメロディーが起こり、抑揚が主張し、
リズムが揃う時に彩を増す。演奏家達が、お互い探し合って生まれる、これほどの正確さ。
鍛錬のテクニックの全てを、ひたすらに、他の演奏家の音の重なりに合わせようとする。日本人演奏家の価値観。

新年にドヴォルザークが教えてくれた事。それは、日本人とは、素晴らしい民族であるという事。太古から、この文化圏の血の中に、和と勇気が生きている。力強く、自分に恥じない生き方をする。
停滞する経済成長の中、薄れゆく力を活力に変えて、新しい年が、いと高きところに向かい、成長を取り戻せるよう、精進していきたい。

Written by Rilakkuma

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