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LVMHの決算発表 -Rirakkuma-

2011年10月21日

アメリカの景気減速の脅威、ヨーロッパの債務問題と見え隠れする深い闇、方向感が定まらず、不安や苛立ちに迷い込んでしまいそうな世界経済と私たちの生活。来年はどこに向うのか、いち早く何をすべきなのか・・・。と考えをめぐらす中、LVMHの明るい決算発表に光を見ました。

フランスのLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは意外にも好調な決算を発表しました。こんな不況でも、高級品は売れているのですね。7−9月の売上高は18%増の60億1000万ユーロ。コンセンサスは58億5000万ユーロでした。売り上げの15%を占める中国での成長をドライバーにアジアは27%増、次いでアメリカが18%増、なんと、日本でも3%増と戻り始めているのです。最も伸びているのがルイ・ヴィトンを初めとするモード関連の商品です。アグレッシブな戦略は見事で、エルメス、ディオール、ジバンシー、今年はブルガリを買収。あらゆるジャンルの歴史ある老舗ブランドを傘下にし、何とも魅力的なブランドを作り上げていくわけです。世界中でキラキラしたブランドを展開していますが、販売拠点が多様な地域に分散されているのが好決算の要因の一つだそうです。

そんなLVMHの営みの中、とても気になったのは、特別な時を祝うお酒、シャンパンのコメント。世界2位のシャンパン消費国アメリカで回復の兆しを見せたとのことです。
シャンパンはどんな飲み物?欧米ではパーティーやイベント、クリスマス、新年をカウントダウンする瞬間、結婚記念日、誕生日、あらゆる祝福すべき儀式に加えて、日常的にも、いいことがあったときに飲む、お祝い気分の明るいお酒です。例えば同僚達と、仕事がうまく行った時、出張の最初の日、又は最後の日を祝って。以前、フランス人の同僚と働いたことがありました。仕事の区切りがついた時に、アペリティフにあえて贅沢にシャンパンを選び、苦労の末に成功したこと、感動、嬉しさを共有し、特別な時を楽しむ事がありました。この次は、お互い、あるいは一緒に、どんなことに挑戦するのかを語り合いながら。
この素敵なお酒をルーツを辿って、フランスの北東部シャンパーニュ地方を旅した事があります。シャンパンが初めて造られた場所を見るためです。田舎の小道を進んでたどり着いたのは、小さな石造りの教会。カトリック教会最古の修道会、ベネディクト会の簡素な建物でした。黒い修道服に身を包み、厳しい戒律の中を生きる、修道士ドン・ぺリニヨンの祈りの中から生まれた飲み物です。キリストの血としてミサでは飲まれるワイン。修道士がワインを発酵中に瓶詰めして放置したところ、偶然シャンパンができたそうです。
最高級のシャンパン ドン・ペリニヨンは、モエ・エ・シャンドン社によって生産されます。当時の国王ルイ15世が量産させました。シャンパーニュ地方からパリに向けて船積みされるシャンパン見て、スパークリングワインの需要が伸びていることを見逃さず、欧州全土やアメリカ向けの輸出用飲料として拡大させるよう、創始者一家のモエに命じたのです。こうして、18世紀末までに欧州全土やアメリカ向けの輸出用飲料の生産拡大をさせました。現在世界で最もシャンパンを消費するのはやはり、イギリス(1人1年0.5本)、次いでアメリカ(同0.05本)だそうです。この歴史あるシャトー モエ・エ・シャンドン社は、ブーブグリコ、ボルドーの秘宝シャトーイケムに先立ち、LVMHの傘下となったのです。

LVMHの決算についてのコメントに、香水、ワイン、アルコール飲料については、伸びは緩慢でありながらも、シャンパンはアメリカで回復の1歩を踏み出した。なぜなら、ブーブグリコは在庫不足となったからである。とありました。

C.I.V.C(シャンパーニュ委員会)の統計によると、シャンパンの輸出動向は、リーマンショック以降2009年を底に2010年から回復し始めました。ワイン類全般が回復する中(2010年対前年比6.5%)、シャンパンの伸びが最も大きかったようです。(同+21.2%)
起伏を繰り返しながらも、アメリカではまた、シャンパンが飲まれ始めました。
停滞する景況感の中、人々の心のファンダメンタルは、それ程悪くないのではないでしょうか?

私も先週、シャンパンを買いました。先輩の役職への就任1周年を祝って、ハイパー・エイドシックのボトルを開けました。フランス王室をはじめ14の王室御用達シャンパンとして名を馳せ、マリー・アントワネットも献上された、栄誉ある、華やかなシャンパンです。マリリンモンローが愛飲し、イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガードが「カサブランカ」の中でも乾杯する、ドラマチックな面もあります。黄色いボトルで、のどに直接的な辛さが残ります。
私には高い買い物だけど、上っていくスパークリングを見つめながら、心からのお礼と共に、努力と成功を祝福したかったから。

想定外のシャンパン消費の兆しや、LVMH決算の影に、どんなペシミスティックな理論にも否定できない動向が見え隠れします。これが一筋の光となるよう、幸せのための経済成長に向い、絶え間ない努力を続ける勇気を持てるニュースでした。

Written by Rirakkuma

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