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靖国の暑い夏 -マイコプラズマ-

2011年08月19日

TIWオフィスは、九段下が最寄り駅であり靖国神社が近い。8月15日、今年も靖国の暑い夏がはじまった。運が悪いことに、家族は肺炎、私は風邪を引いている中での出勤であり、デモに気がめいった。

8:00頃。日本武道館、靖国神社方面に人だかりができている。ヘリコプター音もうるさい。九段下交差点付近のわき道には警察官が防具を付けて待機している。特にやましいこともないのだが、警察官が一列に道路をふさいでいるとなんとなく歩きにくい、朝からテンションが下がる。

12:00頃。体調悪化が進行。外に出ると、蒸し暑さもあり「太陽が眩しかったから」と言い訳をしそうなくらいの気分である。汗をかきながら診療所に向かう。この滝のようなあ汗をかいている状態で聴診されるのは申し訳ないくらいである。診療所では「今のところ今年のデモは静かなほうだ」と医師が言っていた。参加者が高齢化しているから静かなのか、世間の雰囲気がそうさせるのか分からないが、十分うるさい。
近くのコンビニに飲み物を買いに行くと、前日まではお盆のためか、ガラガラの陳列棚が今日はギッシリ詰まっている。防具を着た警官も買い込んでいる。靖国神社の近くのコンビニにとってはある意味かきいれ時なのだろう。

13:00過ぎ。薬を飲み眠気が出てきた中、街宣車から大音量が流れてくる。しかし、何を言っているのかは聞き取れない。聞き取れない音声はイライラするものだ。まるで電車内や喫茶店で通話している人が横にいる感覚である。「何をそんなに主張したいのだ」と心で嘆きながら勤務。

16:00頃。靖国通りをデモ行進が通る。音量の出所が分からないが大音量である。仕事が手に付かない……。そういう時は見物に限る。オフィスからデモ行進をみる。心の中で、「暑い中お疲れ様」である。車道の端を警官に見守られながら比較的穏やかな印象。多くの人は動員されているだけであり、それほど積極的参加者ではないとも感じる。デモといえば、あいだ、あいだにシュプレヒコールをあげる人がいる印象があるか、デモ自体の定番がよく分からない。それほど近くないので雰囲気であるが。

17:00頃。どこかの団体が終了アナウンスを流していた。「最後にもう一度、靖国神社入り口に集まりましょう」と言っているように聞こえる。声しか聞こえないが、夏の運動会などでのアナウンスのような感じである。比較的礼儀正しい印象。ようやく静かになると思うと、少し元気が出てきた気がする。風邪とはそんなものかもしれない。

何かの節目に「まつりごと」をすることは慣習的になっており、その日に合わせアピールすることも自然なことと思う。そのアピールする集団が「組織」となり、政治的に行使力を持つ可能性があることも、あるべき流れであろう。

元外務省の岡崎久彦氏が『戦略的思考とは何か』で、「戦争記憶というものは、generationでだいたい収まりが付く」といったニュアンスの記述があったと記憶するが、新書が発売されてから28年、戦後66年が経過した今も靖国の暑い夏は繰り広げられている。この数年しかみていないでの、過去との比較はできないが、壮大なデモだと思う。
戦争があまりに壮絶な出来事であったからか、戦後平和すぎたからか、記録映像が発達してすり込みが強化・マスコミの発達のためか、将来に対しての漠然とした不安があるからか、「正義」を通したいからか、、いろいろ考えるが、なぜここまでという感じがする。

多くの日本人にとって学校で習う歴史は政治史であり、それは勝者の記録である。歴史家の公正さといっても、同時代の風が付きまとう。その意味で記述時点の「解釈」であると思う。学校以外で市井の歴史本を読み、自身の体験や考えにすり合わせ、解釈し各自の歴史観を持つことも重要だろう。それにしても戦後66年、デモがこの規模で行われていることは不思議な感覚である。もっと身近で優先順位の高いことは多くあるだろうに、と思う。

Written by マイコプラズマ

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