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技術立国の真価が問われる -溝上 泰吏-

2010年10月29日

中国は希土類(レアアース)の埋蔵量は世界の3分の1ですが、世界の9割以上を生産している。また、希土類鉱石の品位が世界一である。それに加え、放射性物質がでないのが最大の武器(低コストで開発できる)となっている。なお、希土類を産出する鉱床としてバストネサイトとイオン吸着鉱がある。バストネサイトは、中国以外でも存在しネオジムなど主に軽希土類を産出する。一方、イオン吸着鉱は、世界中で現在探鉱が進められているが、商業化しているのは唯一中国のみ、ディスプロシウムなど中重希土類を産出する。なお、インドでは原子力発電用の原料を採掘する際に副産物として希土類を生産しており、希土類をメインに生産しているわけではない。放射性物質は切り離すのに手間がかかるため、コストが嵩んでしまう。
昨今新聞に登場している希土類であるが、中国政府が言っている環境問題に大きく関連しているのはイオン吸着鉱のことである。イオン吸着鉱は、中国南部に位置し、少数民族などが経営する零細企業が生産している。資本力がないため、採掘方法も原始的である。鉱床に硫酸を掛けて溶け出した希土類を硫化物として回収するというもの。中央政府の指導で現在は、硫酸を直接鉱山に掛けるのではなく、パイプを差込み、そこに硫酸を流し込むようになり鉱山周辺の森林が枯れるなどの影響が減ったといわれている。しかし、硫化物として回収する方法は大きく変わっていないため、相変わらず鉱山周辺の河川を汚染しているようだ。

一方のバストネサイトは、中国の北部に位置し、大企業が生産にかかわっているため、鉄道輸送などインフラ整備が進んでいる。バストネサイトなど軽希土類を含む鉱床は、米国のカリフォルニア州やロシアのコラ半島などにもあり、比較的分布が広く埋蔵量も多い。米国の鉱山は価格競争に負け一時生産を中止したが、昨今の希土類価格上昇(足元のネオジムの価格はキロ50ドル以上:米国は30ドル以上ないと採算が合わないとTIWではみている)を受けて再稼動を計画している。
ロシアの状況は情報が少ないので詳細は不明。

現在、ハイブリッドカーをはじめハイテク家電、省エネ家電に必ず添加剤として不可欠な存在となった希土類(特に中重希土類は、添加剤として不可欠な素材)、その需要は日々拡大している。一方、資源国による囲い込みにより、その供給量が減り、希土類価格が急騰を続けている。中重希土類の産出が期待できるベトナムやカナダ、アフリカ南部一帯など新規鉱山が稼動するまで2年以上もあり待っていられない状況である。
資源の少ないわが国は、2度にわたるオイルショックを経験し、高い技術力でもって克服してきた経緯がある。技術力立国を自負するわが国が、今こそ、その底力を見せるときではないでしょうか。

Written by 溝上泰吏

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