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FEN(ファーイーストネットワーク)に感謝 -S.T-

2010年08月06日

最近、しきりに英語、英会話を勉強したくなった。ロンドンで20年前共に働いた秘書のスーからクリスマスや筆者の誕生日には必ずカードとともに近況を記したレターが届く。返信を書くのに年々辞書を引くことが多くなる。先般、家内の友人であるドイツ人のドナータが我が家に泊まった。いつも英語で談笑するのだが言葉が出てこない。10年程前、外資銀行でしごかれた頃を最後に仕事は殆どドメスティックとなり英語力は自分で感じるピークから落ちるばかりと思えたからだ。

先日、箱根方面への用で久しぶりに車を運転した。大田区を出、横浜から箱根駅伝と同じルートを走る。原宿交差点の渋滞を抜け茅ヶ崎で国道134号へ入る。江ノ島を後ろに前方に烏帽子岩を望み快適なドライブが始まる。ここでラジオをオンにした。いつか合わせたAM放送周波数810KHzを自然と選択、イーグルスのメローなサウンドに続き時報ともに英語ニュースが始まった。そしてお決まりの「This is Armed Force Network」が流れた。

FEN(Far East Network)極東米軍向け英語放送に30年程前に出会った。地方から上京、3畳一間の下宿を借りた。廊下を挟むはす向かいの部屋の前を通ると外国語放送が聞こえてくる。不気味だ。暫くしたある日その部屋を出ようとした雪国育ちの色白の青年と鉢合わせた。最寄り駅に共に向かう間に話しかけた。大学では英会話クラブに入っていると聞く。完璧な英語が話せるようFENのニュースを録音し何度も繰り返し聞くのだという。

歳は同じ、お互い初めての東京生活ということもあり急速に親しくなった。筆者は英語学習といえば森一郎の「でる単」の丸暗記で凌いできた。彼の英語に対する情熱とFENは筆者にとっては新鮮で刺激的であった。FENのとりこになるのに時間はかからなかった。語学学習というよりボブディランやローリングストーンズなど60年代から70年代にかけてのフォークやロックがただで聞けるのがたまらなかった。

ある日彼から一本のカセットテープを貰った。入っていたのはジョン・F・ケネディ大統領の就任演説。「My fellow Americans : ask not what your country can do for you−ask what you can do for your country.My fellow citizens of the world : not what America will do for you、but what together we can do for the freedom of man.」 要するに「国が何をしてくれるかではなく国に何ができるかを問い給え」という格調高い英語での語りかけと英語独特の抑揚に魅せられた。その後英会話に興味を覚え貪るように語学学習を始めた。

語学とは先ず聞くことなりと思う。会話をする機会がなくなり、言葉はすぐに出てこなくなっても耳はそれ程衰えないと先日FENを聞き改めて思えた。聞くことで言い回しを思い出し、また新たな表現を覚え会話となれば自然にそれが出てくるようになるのだと思う。そんなことから家に帰るとFENと共に過ごす毎日が再び始まった。英会話学習のオプションは沢山あるがFENは身近で無料の勉強機会であることが最大の魅力だ。ことに英会話を初めて学ぼうと志した当時、貧乏学生の身にはかけがえのない存在であった。 

Written by S.T

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