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これはおもしろい −ニアプライム−

2010年05月28日

3月にこの稿でマネックス証券の元チーフストラテジスト羽賀誠氏が推奨していた投資関連本を何冊か紹介した。その中の「ヘッジホッグ−アブない金融錬金術師たち」が今月文庫化され(日経ビジネス文庫)、お求めやすくなった。文庫化にあたりタイトルは「ヘッジファンドの懲りない人たち」に改題されている。早速、買って読んでみたら、文句なくおもしろかった。ここ数年で読んだ本の中ではNo.1だ。557ページもの大部だが、一気に読ませるだけのものがある。

筆者のバートン・ビッグス氏は、イェール大学卒で、モルガン・スタンレーに30年勤めた後、2003年に同僚と3人でヘッジファンドのトラクシス・パートナーズを設立したという金融界の大ベテラン。モルガン・スタンレーではリサーチ部門を立ち上げ、チーフ・グローバル・ストラテジストして、インスティテューショナル・インベスター誌において1996?2003年まで連続してグローバル・ストラテジスト部門第1位に選ばれたというまさにスーパーエリートだ。日本の機関投資家にもファンが多いという。私は寡聞にして知らなかったが。

訳者は望月衛氏。コロンビア大MBAでCFAでもある氏は大和投資信託に勤務されているこれまた立派な経歴の方で、「ヤバい経済学」「まぐれ」「ブラックスワン」など数多くの話題本の翻訳をされている。投資関連の翻訳本では、金融業界と無縁の人が訳していると??みたいな箇所が散見されたりするが、望月氏の訳だと安心して読める。

前置きが長くなったが、「ヘッジホッグ」とはヘッジファンドやそこで働く人のことで、この本ではヘッジファンド業界の内幕やファンドマネジャーの実態が描かれている。単行本は2007年1月の刊行で、リーマンショック前に書かれたものだが、古さを感じさせない。筆者の博覧強記に基づいた毒の効いたユーモアとアイロニーに満ちていて、錆び付いた脳を活性化させてくれる感じがする。

単純な投資のノウハウやテクニックが書かれているわけではないが、個人投資家にとっても、じっくり読み込めば、役に立つことが多いのではないかと思う。本文に様々な本の紹介、引用があるほか、巻末には推薦図書が載っている。翻訳されているものもあり、芋づる式に読むのも手だろう。筆者やウォーレン・バフェット、その相棒のチャーリー・マンガーは驚くほどの読書家だという。余り読まない人は投資家として本当に成功することはできないとマンガーはいう。ただし、筆者は新聞のスポーツ欄以外に何も読まないという人で、トレーダーや投機家として大成功している人ならたくさん知っているとのことだ。

Written by  ニアプライム

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