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もったいない ‐Nanchatte建築評論家‐

2010年05月14日

1983年に建設されたグランドプリンスホテル赤坂の新館が来春取り壊されるというニュースが最近目を惹いた。丹下健三氏設計によるこの建物を筆者は宿泊したことはないが、企業の経営説明会等で何度か訪れたことはある。通称「赤プリ」と呼ばれたこの変わった形状のホテルはクリスマスイブともなると恋人たちで賑わう人気スポットでもあったが、最近では新しくオープンした横文字の外資系高級ホテルに顧客を奪われて競争力が低下したためであろうか。しかし、欧米には歴史に名を刻んだ有名なホテルが多数現存している。建設して27年そこそこで、40階建ての頑丈なビルを建て替えるという効率の悪さ、というかもったいなさは筆者としても黙っておく訳にはいかない。  

ニューヨークではクライスラービル(77階)とエンパイアステートビル(102階)が1930年、1931年と相次いで完成したが、これらは未だ現役で使用されているばかりか、依然として貫禄を保っている。余談ではあるが、高層ビル発祥の地と呼ばれるシカゴを筆者は90年代前半訪れているが、1886年築の世界最古の鉄骨高層建築(12階建て)といわれているRookeryや、その数年後に完成した17階建てのMonadnock Buildingなど、日本で言うと明治20年前後に出来ている事自体も驚きだが、これらはいまだ現存しているのだ。筆者が見た限り保存状態は良好であった。日本は地震が多いといった事情はあるにせよ、建築技術は世界のトップレベルにあると考えられる。ビルと同様に日本の住宅にしても長期活用することで資源の無駄遣いをなくしたらいいと思う今日この頃である。

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