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投資本 -ニアプライム-

2010年03月19日

20年来の親友であり、マネックス証券でチーフ・ストラテジストを務めていた羽賀誠氏が心筋梗塞で急逝してから丁度1カ月が経った。2月5日に近いうち久々に飲みに行こうとのメールをもらった矢先の不幸で、未だに信じられない思いでいる。結局、生前に最後に会ったのは昨年の11月20日になった。ランチをした後、お茶をした。その時、個人投資家は普段、どういったところから情報収集すればいいかということを聞いた。いつも下らない話ばかりしていたのに、この日に限って何故そんな話をする気になったのか思い出せない。個人投資家は基本的に日経新聞だけで戦えるという拍子抜けするような答えが返ってきた(しかし、個人投資家が毎日欠かさず、日経新聞を丹念に読むのは案外、大変かもしれない)。実際に読む箇所を聞き、赤ペンで印を付けた。その時の日経新聞が今でも残っている。読むべき箇所というのは概ね常識的なものだった。筆者が真っ先に読む最終面の小説はほとんど読んだことがないと言っていた。

日経新聞以外の情報源を挙げるならと聞くと、日経ヴェリタスという答えが返ってきた。クオリティの高さを褒めていた。毎週月曜日にストラテジーレポートを書かなければいけないためか、個人で購読しているということだった。ヴェリタスオンラインも速報性の観点から役に立つと言っていた。また、昔からチャートブックを個人で定期購読しており、土日に全ページをバーッと捲ると言っていた。チャートなんかネットでいくらでも見ることができるのにと思うが、紙媒体の一覧性を重視していたのだろう。常に株価をウオッチしている銘柄が100銘柄あると言っていた(と思う)。こうした銘柄のチャートは頭に叩き込まれているようだった。日々の相場で気付いたことなどをメモに書き溜めているとも以前から聞いていた。ファンドマネジャーとして約20年、運と勘だけで生き残ってきたと常々おちゃらけていたが、勘はこうした不断の努力、日々相場と格闘することにより養われたのだろう。どういった銘柄が、どういった局面でどのように動くかは大体予想できると以前から言っていた。

投資本のお薦めを聞いてみると、昨年10月のマネックスユニバーシティのインタビューで3冊(「バフェットの教訓」、「ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!」、「マネーマスターズ列伝」)を挙げたと言っていたが、この他では「ヘッジホッグ」、「億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術」を薦めていた。後者は基本中の基本と言っていた。単純なバイアンドホールドには否定的だったため、バフェット本をほとんど読んでいると聞いて意外だった。

3月に共著で本を出すと聞いていた。亡くなる前日に本に掲載する写真の撮影があり、その日は珍しく遅くまで飲んだそうだ。彼には折りに触れ相場や業界、個別銘柄の見通しについて意見を仰いだが、体系的に投資に対する考え方を聞いたことがなかったので楽しみにしていた。原稿はまだ仕上がっていないと思っていたが、奥さんの話では原稿が間に合い、彼が校正した原稿も会社で見つかったそうで、24日に発売になるようだ。アマゾンで調べたところ、タイトルは「60歳までに1億円つくる プロが教える実践マネー戦略」(日本実業出版社)。彼の生きた証がこの世にわずかでも残ることを今はただ嬉しく思う。

Written by ニアプライム

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