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拍子抜けだった台風18号 -ニアプライム-

2009年10月16日

10月8日に愛知県知多半島に台風18号が上陸し、日本を縦断した。台風の上陸は2007年9月の台風9号以来のこと。10月の台風上陸は珍しく、18号の上陸がなければ2年連続で台風の上陸がないところだった。2004年の台風の上陸数は10と戦後最多となったが、それ以降は非常に少なくなっている。地球温暖化を受けた海水温の上昇により台風が強い勢力に発達しやすくなっても、台風の上陸が増えるとは限らないようだ。台風18号は過去10年で最大規模となり、非常に強い勢力を保ったまま日本に近づいたことや、戦後、最大の被害をもたらした1959年9月の伊勢湾台風(台風15号)に近いルートを辿る見通しとなったこと、秋台風は秋雨前線を刺激し、大雨をもたらす恐れが強いことなどから、メディアでは厳重な警戒を呼びかけていた。木造家屋は風速30mを超えると全壊の恐れがあるとされる。近畿にある筆者の実家は、木造で老朽化が進んでいるため憂慮していた。

が、前評判の割に懸念された被害は意外に小さかったようだ。筆者の住むマンションではベランダのテーブルからお気に入りの植木鉢が落ちて割れるなどの被害が出たものの、実家では風も雨もたいしたことがなかったとのことで被害は皆無だった。内閣府が発表している台風18号による被害状況は、10月13日現在で、住宅の損壊2,146棟(うち全壊4棟)、浸水2,182棟(うち床上370棟)、死者5人となっている。伊勢湾台風の被害は、建物の損壊83万3,965棟、浸水36万3,611棟、死者4,697人(行方不明と合わせると5,098人)。まるで比較にならない。過去20年で最も被害が大きかった1991年9月の台風19号の被害が、建物の損壊17万447棟、浸水2万2,965棟、死者62人だったことと比べてもはるかに小さい。この時の保険金支払額は5,679億円と過去最大になったが、今回はそれほど大きな金額にはならないとみられる。東京海上日動火災は15日に事故受付をもとに元受ベースの発生保険金を85.1億円と開示している。自然災害による発生保険金の通期の想定は過去の平均的な水準の250億円。今後、事故報告の増加とともに発生保険金は拡大するだろうが、再保険による回収もあるため充分に想定内に収まりそうだ。

日本の台風被害は、20世紀半ばの伊勢湾台風以降、確実に減少してきている。この背景として、気象観測予報技術の発達、政府・自治体の防災対策の進展、個人の防災意識の高まり、インフラの整備の進展を挙げることができよう。悪者扱いされる公共工事だが、減災には相応の貢献をしてきたといえる。こうした中でも損害保険会社は06/3期から伊勢湾台風級の自然災害に備えた異常危険準備金の計画的な積み立てが求められている。各社の積み立て状況はまだらだが、概ね完了したところもあり、損保の財務内容は総じて非常に強靭といえるだろう。異常危険準備金は米国会計基準では資本として扱われる。こうした資本性の高い負債を考慮した修正PBRは大手損保では0.5?0.6倍程度にとどまっている。太古の地球では活発な火山活動を原因とする大気中の二酸化炭素濃度の上昇により温暖化が進んだ時期に、風速300m、津波の高さ100mに及ぶハイパーハリケーンが発生していたというから地球温暖化による自然災害の巨大化を楽観視はできないが、損保株の割安感は顕著といえるだろう。

Written by ニアプライム

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