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体育の日を前に -Star.-

2009年10月09日

10月唯一の祝日、「体育の日」を今年もまた迎える。祝日の由来は1964年10月10日アジアで初開催の東京オリンピックだ。直前のローマで「裸足の王者」として英雄となったエチオピアのアベベ選手が余裕でマラソン連覇を遂げた後、国立競技場内で英国選手に抜かれながらも、銅メダルのゴールを駆け抜けた円谷選手の頑張りに感動を覚えたことが筆者の幼い頃の微かな記憶として残る。この頃を境に新幹線、高速道路、「東洋の魔女(東京五輪女子バレーボール金メダルチームの主体メンバー)」に因んだ「サインはV」などのテレビ文化、などと経済が急速に発展し、生活全般が豊かになっていったような気がする。

先日、環境五輪を強調し、選ばれれば、アジア初の2回目開催となる2016年東京五輪招致戦に敗れた。特別高い関心があった訳ではないが、立候補した以上勝って欲しかったし、子供達にアスリートの最高の戦いを目の前で見せてあげたかったと思うと残念であった。3兆円弱の経済波及効果が見込めたとはいえ、優先事項が多々あると思われる中、多額の費用をかけての失敗はただの無駄遣いと言えなくもない。決定の仕組みに詳しくはないが、IOC評価委員会で指摘を受けたように他の候補都市に比べ世論の支持率(55%程度)が低かったことが敗北の大きな要因になったように筆者には思えてならない。しかも、年代別では青年期に東京オリンピックを体験した60代の支持率が最も低かったことが興味深い。

2020年に五輪招致に再チャレンジするとの観測もあるがいかがなものだろう。東京オリンピック当時、参加国・地域数は93、参加選手数が5,151名であった。44年後の昨年北京では参加国・地域数は204に拡大し参加選手数は11,193人にまで膨れた。参加地域が広がり、新興国が台頭する中では今後ますます招致のハードルは高くなって行くと思われる。欧州中核都市では複数回開催の例があるとはいえ、かつての五輪は欧米先進地域中心で参加国が限られたことが大きいと言えよう。国際的な思惑が複雑に絡む中、招致成功には高尚な理念、入念な戦略に加え、かなりの費用が当然に必要となろう。
振り返ると今回の立候補、招致活動には五輪は経済、東京、首都圏活性化のためという政策ありきで、世論や「スポーツを通じて・・・文化や国籍など様々な差異を超え・・・平和でよりよい世界の実現に寄与する」との五輪本来の趣旨がなおざりにされていたような感があり、こうした中での落選にどこかすっきりしない感じを覚えたのは筆者だけであろうか。再びチャレンジするとしたら先ずは世論を確り押さえた上で推進して欲しいと願う。一方で、五輪が再び来なくても、体育の日にこめられた「スポーツにしたしみ健康な心身をつちかう」という願い、「東京オリンピックの遺産」が永遠に受け継がれ行けばそれだけでも十分ではないかとも考える。五輪落選と同じ週末、女子テニス界では杉山選手が最後のダブルス決勝を戦い引退した。17年間小柄な体で世界各地を転戦し、欧米女性の強打と渡り合ってきた姿、タフな精神力には改めて深い感銘を覚えた。    
   
Written by Star.

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