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子ども向け物語に学ぶ -小さな地球人-

2009年10月02日

10月に入った。読書の秋である。最近読んだ本の中で感銘を受けたものを紹介したい。子ども向けに書かれた本でも非常に奥が深く、根源的な問題を考えさせられるものがある。ミヒャエル・エンデの「モモ」は時間の意味、現代人として生きる意義を深淵から問いかける名著として広く知られているが、ここではエンリケ・バリオスの「アミ 小さな宇宙人」を取り上げる。純粋さを残している子どもの時期にこうした物語を読むことも素晴らしいが、人間或いは人生の何たるか多少わかったつもりの大人にこそ読んで欲しい本でもある。最近新聞か何かで、「リーマンショックでは左脳社会の落とし穴にはまった」というコメントを読んだが同感である。左脳中心の人にはこの手の本は「現実離れして、あり得ない」と一蹴するかもしれないが、右脳を思い切り働かせて読むと、実に大切なことが直感的にも伝わってくる。

この本のメッセージは極めてシンプルだ。主人公の少年ペドゥリートが小さな宇宙人アミと友達になり、アミを通じて本来あるべき人間の生き方を学ぶというストーリーである。科学の水準が愛の水準を上回りつつある地球への警鐘とも受け取れる。魂のレベルの進んだ星から来たアミには、人を幸福にしない地球のシステムが奇異にうつる。実際そう見ている地球人も多いだろう(筆者も含めて)。この本で表現されている「愛の度数」や「宇宙の基本法」という考え方はユニークであるだけでなく、本質を突いている。人類は科学の進歩をベースにこれまで国家や貨幣経済システムを築き上げてきたが、現在はこれらの弊害、ほころびの方が目立っており、今はシステムの転換点を迎えているといえよう。真に進歩した社会では、国境もお金も要らないという。ここ地球では、行き過ぎた金融資本主義の下で、富める者はますます豊かになり、貧しい者は一段と貧窮を極める構図が加速している。本来地球には全人口を養えるだけ十分な食料があるにも関わらず、毎日多くの人々が飢えで亡くなっている事実からも、何かがおかしいと考えるのは筆者だけではあるまい。

日本でも政権交代が実現し、鳩山首相は国際舞台でも友愛を強調している。有言実行はなかなか難しいことではあるが、宇宙人のようでもある新首相の今後の舵取りには期待したい。とはいえ、本当の意味で「友愛の社会」を実現するには、首相だけではなく、一人ひとりの意識を変革する必要がある。最近いろいろな本を読んでいると、先に述べたような世界の大きな問題(更には環境問題も含めて)の解決に向けて世界の至るところで多くの人々が立ち上がっていることがわかる。無名の市民が孤軍奮闘している姿には勇気付けられる。新聞などマスコミは悪いニュースには飛びついても、この様な取組みを十分伝えているとは言い難いが、こうした動きは必ず共鳴し、うねりとなるだろう。個人の意識改革がある一定数まで達したら加速度的に世界が良い方向に変わっていくと考えるのはあまりに楽観的、夢想家的だろうか?アミの生まれ故郷であるオフィル星を一度は訪れてみたいものだ。

Written by 小さな地球人

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