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東京ゲームショウ寸簡 -鈴木崇生-

2009年09月25日

24日、東京ゲームショウへ行ってきた。感想を一言で述べるなら危機感が募った、ということになる。

まず、人がいない。様々なブース及び露店で話をしたが、明らかに初日の人数は去年を下回っていると感じられた。事前に情報が出尽くして目玉商品が乏しかったこともあり、やむをえなかったのではないかと思う。

基調講演ではSCEの平井社長が登壇した。空席は早々に埋まり、立ち見客で会場が溢れた。なにかサプライズはあるかと期待していたが特になく、この時点で帰途についた業界関係者もいたのではないかと推察する。

平井社長の発言で興味深かった点が1つあり、それは新型PS3の販売が100万台を突破したということだ。この勢いは旧型の初動に比肩するため、随分と勢いは盛り返したように感じられる。一方で販売動向の低迷が指摘されていたWiiが値下げを発表した。値下げはしないと任天堂の岩田社長が幾度となく述べていただけに、相当の危機感があるのだろう。そもそも、少し前の足元の動向として、一番売れていたゲーム機はPS2であった。世の中に新世代のゲーム機は必要とされていないともとれる事象が起きたわけだ。

値段は安ければ安いほどユーザーにとっては好ましい。これは至極当然のことでありゲーム市場全体の盛り上がりに結びつくことを期待したい。しかし、遊びたいゲームがあるからこそゲームは遊ばれ、それが市場の拡大、ひいては各企業の業績へと帰結しよう。

最近、ゲームの開発者が作りたくて作った作品が世の中に出てきているのだろうか、と考えることがある。その動機は自分が面白いと思って作ったゲームを遊んで欲しいという欲望でも、金銭を稼ごうとする欲望でも良いのだが、一番不味いのは、仕事を投げられてプログラムを組んだとか、その開発チームに宛がわれたからだとか、そういう気配を感じられることがある。証券サイドにいる人間として企業の収益が上がらないのは困るためその意見には賛同しかねるのだが、一人のゲームのプレイヤーとして東京ゲームショウを見渡すと意気が沈む。

ゲームの市場が拡大したことは企業にとってハードルが高くなったことを意味する。業績の伸び率を見て、どうしても証券市場は評価を下すからだ。収益を追い求めると、必ずどこかで破綻をきたす予感がする。また、才能は流出することになると思われる。
 その際、行き着く先は簡易型のゲームということになるのだろう。特にモバイルでの展開が進もう。まず、コストが安く資本力が小さくても開発の障壁は小さい。参入障壁も低い。次に流通サイドなどの中間マージンを省くことが出来るため、損益分岐点が低くなる。携帯電話キャリアの資本力は小売や流通に勝ろう。すなわち、広告で見られるように、依然としてテレビなどマスが資本力を背景に強い状態が続く時代に即さないようなことは起こらないと思われる。そしてなにより、携帯電話は一人一台とリーチ力は圧倒的だ。

資本を蓄えた企業ほどMBOなどを用いて市場から撤退して収益という数字の呪縛から逃れた方が、結局はその企業にとってためになるのではないかと、そんなことを考えながら見回っていた。

Written by 鈴木崇生

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