「パンの耳」や「カステラの切れ端」などが最近ブームとなっているらしい。これまで見向きもされなかったもの、もしかしたら捨てられたかもしれないものが見直されている。味が変わらず、値段が安いこともあって、今回のブームや消費不況と関係なく、「カステラの切れ端」あるいは切れ方が不揃いなもの、割れた煎餅や形の崩れたせんべいなど、私はこれまでも時々買っていた。「パンの耳」だけというのは買ったことがないのでわからないが、カステラの切れ端などは、見た目があまり良いとは言えないため贈答品には使えないといえども、本体よりも美味しいと感じることがあるほど。ただ先日テレビで見ていると、包装して形も整ったカステラ本体が売れないため、わざわざ不揃いに切って、いわゆる「わけあり商品」として売ることもあると聞いて、つい考えらされてしまう。実質的に商品の値下げ競争になっているのではないだろうか。
消費不況が深刻化しており、不況からの脱却を目指してスーパー等の大手流通メーカーがPB商品の比率を引き上げている。しかも、PB商品の値下げ合戦が加速している模様。PB商品といっても、一般の中小メーカーに生産を依頼するものや自社グループで生産するもの、大手食品メーカーに依頼するもの、生産社名を明記するもの・しないものなど、責任や収益が大きく異なるので一概にいえない。しかし、大手の食品メーカーが生産を受託しているPB商品は、工場の稼働率が上がることなどのプラス面もあるが、PB商品の比率がNB商品の比率に近づくにつれて、NB商品の値下げ競争を加速させないだろうかと心配する。値下げを止めれば両社とも、相応の利益は維持できるにもかかわらず、相手企業が値下げをして利益を奪うかもしれないと考え、双方で値下げ競争をして共倒れしてしまうことがある。経済用語の「囚人のジレンマ」といわれるもので、消費者からみて安くなることは大歓迎ながら、現在の消費状況は「囚人のジレンマ」に陥っているような気がする。
ちょうど横山秀夫の「囚人のジレンマ」の短編小説を読んでいたところ。最近では「クライマーズ・ハイ」、「半落ち」、「出口の見えない海」など、映画化やドラマ化されているのでファンの方が多いかもしれない。「囚人のジレンマ」といっても経済用語として使われているほうではない。共犯関係にある容疑者を別々の部屋で取調べをして、お互いが疑心暗鬼となるなかで、自白に持っていく心理描写などが書かれている。刑を軽減することを条件に自白を促すことや、相手が自白して自分が自白しなかった場合に極端に刑が重くなるというようなことを条件に自白を促すことが果たして実際にあるのかどうかは知らない。しかし、相手が信用できない場合(あるいは口裏を合わせることが出来ない場合)、自分にとっては自白をすることが最も合理的な行動ながら、相手も同じことを考えて行動するため、結局、両者にとっては最良とならない場合が多い。
Written by K.S