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ターンベリーの悲劇 -ST-

2009年07月24日

今週の日曜は書棚から古びたコースガイドを取り出し真夜中の3時半頃までテレビにかじりついてしまった。59歳、ワトソンに142年ぶりの最年長優勝という歴史的快挙達成への期待がかかったためだ。残念ながら最終18番ホールでワトソンは優勝のかかったパットを外す。世界中のゴルフファンが溜息をつく中、プレーオフを制し第138回The Open Championship(全英オープン)の優勝を飾ったのはトップに3打差でスタートした36歳のシンクだった。シンクは優勝争いから1歩後ろで連日我慢が続いた。最終日も17番まではボギー先行で苦しかったが何とかパープレーで纏める我慢のゴルフを続けた。そして最終18番で約4mのバーディーパットを沈めワトソンに1打差とし運を引き寄せた。

明暗を分けた18番ホール、ワトソンはピンまで約180ヤードの第2打を9Iか8Iかで迷った末、8Iで攻めた。方向はピッタリ、しかし追い風に乗ったボールはグリーンで跳ね無情にも奥にこぼれた。グリーン奥ラフからの下りのアプローチとなった第3打をパターで打つが強すぎた。3m程度オーバーし微妙な距離の返しを残した。優勝を賭けた第4打はよくあることだが打ち切れず右へ外した。第2打のクラブ選択が結局ポイントになった。最初は小さい9Iを手にしたのに。だが第3打をパターでなくアイアンで攻めていたらどうなっただろう。ボールを浮かせカラーの抵抗をかわせるため距離は案外合わせ易い。もしかしたらピタリとピンに寄っていたかもしれない。

1988年の夏、レンタルしたばかりのテレビはたまたま全英オープンを中継。優勝はバレステロスだったが、BBCは前年の覇者地元ファルドを追った。精悍な顔つきと長身からのゆったりと正確なショットに魅了された。以降このスポーツにはまった。歳や性別にあまり関係なく競える。ボールの落とし所や風を計算しクラブを選択するなど頭を使うことが実に面白い。また勇敢であっても潰されるし、慎重すぎると実りは少ない。状況に応じた適切な判断が重要で大失敗して大恥もかく。だが我慢を続けると名誉挽回のチャンスは必ずくる。プレーと同時に人生の指南を受けている気分になれることもこれまた魅力だ。

昔コンペの序盤にバンカーのあごで大たたきをした。ショックは大きく止めたくなったが我慢した。その後のショートホールで下り10cmを残すバーディーを取った。なんと名門ウェントワースでの栄誉。人生で最もホールインワンに近いショットとなり仲間が撮った証拠写真は今も宝物だ。ゴルフは本当に何が起きるかわからない。それはプロでも同じ。10年前の全英カーヌスティーでは最終ホールで3打差がひっくり返る悲劇が起きた。そして今年は最後まで主役を務めたワトソンを悲劇が襲った。4日間の過酷な戦い終えた老将にプレーオフは残酷だった。ただ最後までギャラリーの惜しみのない拍手が彼に送られた。
年齢を感じさせぬプレーが人々に勇気と感動を与えたと言う点では敗れはしたが勝者はワトソンだったと言えなくもない。しかし忘れてはならないのは多くの選手にチャンスが残る中最後まで切れなかったシンクの我慢。全英オープンはまた多くの感動や教訓を残してくれた。再びゴルフの魅力に目覚め気づいたらクラブを握り締めていた。 

Written by ST

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