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漫才に存在する第5の要素 -BUG-

2009年06月05日

6月3日の日経新聞(朝刊)に面白い記事が掲載された。表題は「なんでやねん!?官僚研修で漫才」というもの。
国土交通省が入省4年目の若手官僚の研修に「漫才」を採り入れ、対人能力の向上を図るという内容だ。これに先立って、吉本興業は09年から企業や教育機関向けの「漫才講座」に本格参入しており、講師となる若手タレントの知名度アップと収益向上を狙っている。


私自身、関西圏出身ということもあって、子供のころから「漫才」に慣れ親しんだが、よくよく考えると確かに「漫才」は作文技法としての「起承転結」がうまく取り入れられているほか、コミュニケーション能力を養うには適当なツールであると気づいた。ベテラン漫才師「オール阪神巨人」のネタの1つに以下のようなものがある。まずは、これを起承転結に分類してゆきたい(聞き取りづらかった部分はXXで示している。お許し頂きたい。)

(春一番 笑売繁盛より 阪:オール阪神氏 巨:オール巨人氏)
阪:明けましておめでとうございます。
巨:本当にね。もう4日目ですよ。皆さん。
阪:あっという間でございます。

【起】巨:今日は実はね、我々空港から帰ってきましてね。
   阪:我々ね。
   巨:仕事でね。
【承】巨:ほんで、やっぱりほら。Uターンだから。
   阪:そう、海外、海外行ったりね。
   巨:わかりますねん。もう若い女の子も、男の子も顔真っ黒けでね。
   阪:ハワイかグアムかどっか(どこか)行ってましたんやろな。
   巨:ハワイかグアムか行って。
【転】巨:そんで(それで)、さっき楽屋行ったら阪神君のお父さんが、居てはりましたんや。
   阪:XXできましたんや。
   巨:顔真っ黒けや。
   阪:顔真っ黒けでんねや。
   巨:ハワイですか。グアムですかってね。
   阪:いやいやいや
【結】巨:ううん。肝臓悪いねや。
   阪:いや、いや、やかましいわい。あほ。

このように、テンポの良い漫才の中にもしっかりと起承転結が存在する。
ただ分かりやすいように、ネタを簡略化、標準語化し作文として表してみると、更に面白いことに気づかれるだろう。

【起】今日実は、我々は仕事で空港から帰ってきました。
【承】Uターンの時期で、若い男女が顔を真っ黒にしていまして、ハワイかグアムにでも行っていたのでしょうね。
【転】先ほど楽屋にいったら阪神君のお父さんが居て、顔が真っ黒だったのです。ハワイやグアムに行ったのですかと聞きました。
【結】肝臓が悪いと言うのですよ。

このようになると、オール巨人氏が1人で話をしていても意味が通じるようになる。また、これはニュースのように、情報の中心部分のみを一方通行で発信することが可能であることがわかる。

しかしながら、漫才には5つ目の要素(【感(感想)】とでも定義しようか、つまりツッコミのこと)が存在している。これは元のネタの中の「いや、いや、やかましいわい。あほ。」という部分に相当するだろう。単独でも終了が可能な【起承転結】に加え、漫才には対人が存在しない限り生まれない【感】という概念あるのではないだろうか。つまり漫才とは、対人を存在させることにより【起承転結】に「あいづち」と「反復」を付加させ、さらに「感想(ツッコミ)」の機会を与えること、と捉えることができるだろう。


昔から東京の方からは「関西の人と同席をすると、話にツッコミを求められる」という話をよく聞く。また逆に関西の方は「東京の人と同席すると、オチにツッコンでくれない」との話も聞く。漫才に慣れ親しむ土地柄、関西の方は自然と第5の要素【感】が身に付いているのだろう。そのため、企業や官庁の研修に漫才を取り入れることは、対人能力を向上させる点で有効な手段となる可能性が高い、と私は考えている。(なお、今回のTIWカフェは起承転結に沿って作成したつもりである。読み終わられた後、「いや、いや、やかましいわい。あほ。」と声に出して頂きたい。第5の要素【感】が実感できると信じている)。

春一番 笑売繁盛 動画サイトURL
http://www.dailymotion.com/tag/%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%B0%E8%8A%B1%E6%9C%88/video/x46i5m_fun

Written by BUG

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