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若く、熱くありたい -ST-

2009年05月15日

気が付けば白髪の増えが気になる年齢になっていた。老化は否めないが、心は若く熱く、そして何事にも常にチャレンジングな「素敵なおじさん」を目指したいと思うようになっていた。ところがこのところ何の感動も興奮もなくただ毎日が過ぎているような気がする。若い頃には感動、感激で心が大きく揺れた。また誉められた話ではないが不満が抑えきれず爆発することも度々あったのだが。加齢とともに感受性が鈍くなり、丸くなると良く言われるが周りの出来事や自分の行動に無頓着な「ただのおじさん」になってしまったのだろうか。白髪よりもそのことの方が気になり、最近心に留まったことを通勤電車の中で振り返った。

先般、名古屋へ出張した。二日目は生憎の大雨。JR刈谷駅のコインロッカーから手荷物を取り出し東海道線に乗った。JR名古屋駅から西へ数駅先に次の初訪問先の企業がある。グーグルの航空写真で見る限り駅周辺には賑やかそうな気配はない。雨の中、荷物がとても邪魔で駅にコインロッカーがないと困ると思い、途中の名古屋駅でロッカーを探した。残念ながら、改札内になく途中下車を試みたが断られた。やむなく重い荷物を抱え現地に向った。駅を降りると想定どおり何もない。周りを見回すとロータリー左手の自転車預かり所の看板が目に入った。隅に小さく「荷物預かります」と書かれている。迷わず店の扉を開くとおばあちゃんが一人座っていた。聞けば200円後払いで預かってくれると言う。随分、得をした気分になり、ついでに時間調整ができる場所がないかと尋ねた。するとおばあちゃんは腰を上げ、店の外に出て対面の建物を指差す。筆者が喫茶店の看板に気がついたところでおばあちゃんから自慢げに「ここには何でもあるだ×××××(方言で正確に表せない)」との言葉が飛び出し、おばあちゃんはにっこりと微笑んだ。喫茶店では豆を手挽きし、珈琲をサイフォンで淹れてくれた。ここにはコンビニやマックはないが大概の用は隣近所で足せる高度成長期の暖かい昭和が残っているととても感激してしまった。

先日、国内某生保が変額年金保険の販売を一部休止するとの記事が目に付いた。対象は生保が元本を保証する一時払いタイプとのこと。同業他社が運用環境の悪化により同商品から相次ぎ撤退する中、銀行の窓口販売が同社商品に集中したためと言う。2000年前後に変額年金保険が国内に入った時、公的年金の補完としての意義は大きいと筆者は考えた。しかし、一方でこの商品の契約者が高いリターンを得るのには株価の相当な上昇が必要だと思った。なぜなら販売は銀行、運用は専門家という仕組みを聞いて費用が嵩み運用コストが重いと思えたためだ。その後、変額年金保険の市場は元本保証タイプが登場し急速に拡大した。これにはとても驚いた。そもそも、変額年金保険の意義はリスクを取りリターンに賭けることなのではないか。常識的に考えると保証が付くとリスクは取りにくい。積極的にリスクを取り失敗すればそのつけはどこかに及ぶ。保証を買えばコストが嵩み契約者の負担になるのではと。そして、これでは昔からある定額年金保険の普及を行うことと余り違いがないのではないかと疑問を感じた。だがたぶん、すごく頭の良い人がいて、元本保証が付けば銀行に馴染みの薄かった相場の文化が定着し、銀行は融資難の中、より手数料の高い生保の変額年金保険への販売集中で手数料ビジネスを伸ばせる。一方、生保は従来型商品の販売が苦戦する中、販売と雇用が守れると考えた、と思えばこの元本保証タイプ登場の意義と市場拡大がすんなり納得できた。引続き元本保証がないタイプの変額年金保険は売り続けられるのだろうが元本保証タイプからの撤退や休止の販売面への影響は免れないだろう。株式相場が底を確認し、上がり始めたと思える今こそ最も売られて然るべき商品なのに。筆者の理解が誤っているかもしれないが歪んだ商品導入が図られたために、公的年金の補完的役割を担い登場したと考えられる商品の市場が縮小してしまうのだと思えて不快感と落胆とで一杯になってしまった。

それなりに感激や憤慨があり、まだ若い、まだやれると思った瞬間、筆者が乗っていた通勤電車は降車駅である神保町の隣、水道橋に到着、乗り過ごしに気付きドアが今にも閉まろうとする所を慌てて飛び降りた。周囲の目が筆者に向うのを感じ、変なおじさんを演じてしまったことで一気に「ただのおじさん」度がアップしてしまった。 

Written by ST

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