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晋の郤成子(郤缺) -鈴木崇生-

2009年05月01日

晋に郤成子という人物がいた。郤氏という家柄は晋の中で大きく、軍事力を誇った。晋の文公(重耳)が生きた時代、彼の父は文公の弟である夷吾に仕え、文公と争って敗死し、家は没落した。

彼はそのとき、国外へ出ず、山に篭り時節を待った。反乱者の首魁の子であり召し捕えられることを恐れたかもしれないが、自らは晋の臣であるという誇りを抱いていたのだろう。やがて彼は許されて召抱えられるが、父が反乱者ということもあり重用されることはなかった。大功を立てても報われなかった。それでも不満は言わず、父の仇とその子らに仕え続けた。

文公から3代たち、ついに彼は執政の権限を得るまでに上り詰め郤氏の全盛時代が始まる。晩年彼はこう述べた。「徳がないときは努力するしかない。努力しないで人に求めることは出来ない。努力すれば成果が上がる。徳の薄いものが努力せずして何ができようか」「上に立つ者が努力せずして、人を従えることなど叶わない」。

上に立つ者が人心を掌握できないとき、まず己を省みて徳を重ねることに努め、次に人心の掌握に努めなければならない。これは論語の中で説かれていることである。今の政治家に一人でも徳を感じることの出来る人物がいるだろうか。自分の権力に固執し、そのためにだけは努力していると見える。払うほどに損をする国民年金、補正予算案のつけとして消費税の増税も控えている。先代の負の遺産を増幅されて我々20-30代が背負わされることになるのだから至って不幸だ。挙句、定職すら定まらず所得水準が非常に低い世代である。せめて艱難辛苦を共にできる政治家であれば忠誠心も湧こうというものだが。いずれ大きなうねりとなって、国内に騒乱が巻き起こる危惧を感じてならない。

Written by 鈴木崇生

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