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TIW Cafe

モーニングブレッド -Cranberry Jam-

2009年04月17日

近所のスーパーで福引をやっていました。それは昔ながらの福引で、木製で回すとガラガラと音をたてるものです。横にはカゴ一杯の駄菓子。うまい棒やらどんどん焼きやら懐かしい駄菓子が所狭しと並べられています。私が子供の頃大好きだったキャベツ太郎もあります。白はハズレ、赤が出ると駄菓子がもらえる仕組みでした。しばらく様子を眺めていると、白と赤は半々くらいの割合のようでした。なんだか無性にキャベツ太郎が食べたくなってきたので、白を出して悔しがる子供を尻目に見ながら、ヨシッと神経を集中させてひとつ深呼吸をしました。求めよ、さらば与えられん!小さく天に祈りを捧げて心の中でキャベツ太郎、キャベツ太郎と念じながらガラガラを回すと、‥‥ポトリ。ん?これはなんだろう?想定外のものが出てきました。その玉は、鮮やかなコバルトブルー色をしていたのです。一瞬の静寂のあと、カランカランカラン!狭い店内にハンドベルの音が鳴り響きます。「おめでとうございます!」威勢よく声をあげる店員。少しだけ色めき立つ店内。なんとなんと、1等賞を当ててしまったのです。景品は、象印のホームベーカリープレミアムホワイトでした。あまりのことに一瞬よろこびかたを忘れてしまい、ヒョー!と素っ頓狂な声を出してしまいました。なんのご褒美でしょう。欲を出して1等賞を狙わなかったのが良かったのかしら。いや恥ずかしながら欲むき出しでキャベツ太郎を狙っていたのです。そのせいか赤と白以外があることに意識がいきませんでした。景品を受け取ると、友達の赤ちゃんをだっこするときのように大事に胸に抱えて、家路につきました。

こんなラッキーなこと最近あったかしら。最近うれしかった出来事といったら、観葉植物が花をつけたとか、昔のワンピースがまだ着れたとか、ATMから新札が出たとか、遅刻と思って飛び起きたら休日だったとか、大好きなかぼちゃパンがちょうど焼きたてだったとか、頑張ってもその程度のことしか思い出せません。これからはいつでも家で焼きたてのパンが食べられる。そう思うと自然と笑みがこぼれます。ダンボール箱の中から恭しく登場したムッシュは、凛としていて、プレミアムホワイトの名に恥じない気品あふれる出で立ちでした。「ボンジュールマドモアゼル、これからあなた様の朝食を担当いたします、ブーランジェです。」そんな声が聞こえてくるようでした。

翌朝目が覚めたときは、えもいわれぬよろこびでした。小麦粉が香ばしく焼けたほんのりと甘い香りが、私をやさしく包み込むのです。そして焼きたての温かいパンにミックスベリージャムをのせて、手でちぎってほおばったときの口いっぱいに広がる幸せ。人はパンのみに生くるにあらず、と言った人もその考えを変えるのではないかと思うくらいのおいしさでした。C’est tres tres bon !

Written by  Cranberry Jam

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