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何かご質問ございませんか -Zimmy-

2009年03月27日

 
メルマガ3月13日号のNISHIMURAの眼に、「いい講演には例外なく多くの質問が出る」とあった。時間の関係で司会者が質問を制限する場合を除けば、一般的にはその通りだろう。しかも、これは何も講演会に限らず社会人向けの各種セミナーなどでも同様のことが言えると思う。私などは外部向けではなく、社内勉強会での講師を担当した時でさえ、参加者からの質問がないと「つまらなかったかな」と思いすごく気になる。
 
このように考える背景には、かつてリテール証券のアナリストだった時のトラウマが残っているせいなのかもしれない。国際営業部の営業マンとともに、外人機関投資家を訪問して業界や銘柄のプレゼンテーションを行った際、質問がゼロだった場合はオーダーに繋がるケースが全くと言っていいほどなく、逆に質問があった場合は直接お話しした銘柄でなくとも何らかのサンキューオーダーが入ることが多かったからである。気合を入れてプレゼンしたつもりでも反応が鈍く、ガックリと肩を落として帰社したことが何度もあった。
 
そう言えば同じ証券会社時代、主幹事もしくは副幹事を獲得した新規上場企業の社内(営業部店)向け会社説明会がしばしば開催された。それが担当セクターの企業だった場合は、結果的に必ずといっていいほど公開引受部や資本市場部の担当者から「Q&Aコーナーで2?3問質問してください。また質問内容は前日までに電話で知らせるように」という依頼があった。いわゆる想定質問である。引受担当者としては、せっかく苦労して幹事を取ったのに会社説明会で積極的な質問がないと盛り上がりに欠けることに加え、会社の方に失礼という事情もあったのだろう。
 
1年ほど前に知り合いのIRコンサルタントに聞いた話で、クライアント企業の新規上場説明会や決算説明会で出席者から質問が出ないのは本当に困ると言っていた。クライアント企業の社長が、「質問がゼロというのは、当社に本当に関心を持っているアナリストや機関投資家が集まっていないのではないか」とIR会社の出席者集めに疑念を抱くからである。私が「質問がない時はどうするのですか?」と聞いたところ、コンサルタントは「会社の方に何か付け加えることはございませんか」とお願いすることにしているという。
 
ところで最近私が出席した大学の特別セミナーのQ&Aはかなり風変わりなものだった。先週木曜日に東大で行われた貝塚啓明先生(財政学の権威)が講師を務められた金融セミナー「アメリカの金融危機-大恐慌と比較して-」でのことである。講演自体は1時間で終わり、残り45分間がQ&Aに充てられた。ところが、そのQ&Aコーナーで2人の方が立て続けに質問そっちのけで自分の意見を長々と開陳したのである。
 
1人目は最前列に座った方で、「金融は何も価値を生まない。銀行への規制は強化すべき」などと自説を15分ほどまくしたてた。それが一段落したので貝塚先生が手短にコメントをされた後、何とその方は再び同じ話をし始めたのである。たまらず司会の植田和男先生が「次の方もおられるので」と話を途中で遮った。延々と話が続きそうな気配だったこともあり、かなりの好判断に思われた。ところが2人目の方も訳のわからないことを10分以上も言い始めたので、セミナー会場はザワザワとした何かしら異様な雰囲気になった。貝塚先生も困惑の表情を浮かべられたが、発言終了後に植田先生が一言「ご意見として承っておきます」とうまく締められた。
 
今回のケースからは、大方の出席者が満足する講演会やセミナーでは講師のレベルや話の内容が重要なことは言うまでもないが、せっかくいい講演であっても質問者によって台無しになる危険性が浮き彫りになった。核心をついた質問であればいいのだが、Q&Aの場で自説を滔々と述べられても、出席者は興ざめするだけである。月並みな結論になるが、全体をコントロールする司会者の役割がとても大きいことを痛感した。
 
Written by Zimmy

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