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本当の豊かさとは? -Natural Spirit-

2009年03月13日

日本は約150年前の開国以来、欧米化を進め、戦後の急速な経済発展を経て世界第2位のGNP大国となった。お金を稼いだことで欲しいモノが容易に購入できるようにもなった。マイホーム、自動車、テレビなどのAV・家電製品、カメラやゲーム機などのレジャー関連など製品は充実し、近年はPCや携帯電話の登場で情報処理・通信も格段に便利になったものの、生活とモノが密接に繋がるほど、ますます豊かさから遠ざかっていると筆者は感じる。確かに物質的には豊かになり、利便性は満たされたが、一方で失ったものの代償も大きい。入手できるモノや情報が劇的に増えることは悪いことではないが、それに応じて精神的な部分での充足感も満たしてあげる必要があるのではないだろうか。

「豊かさ」とは一体何なのだろうか。人が生活に豊かさを感じるには、若干個人差もあるだろうが、信頼できる人々、コミュニティが周りにあり、自然に囲まれた姿を筆者は思い浮かべる。今から30年以上前にブータン国王がGNPとの対比で提唱した国民総幸福度GNH(Gross National Happiness)といった考え方も一考に値する。同国では、基本的な生活、感情の豊かさ、時間の使い方、コミュニティの活力、文化の多様性、自然環境など幾つかの項目によりGNHを数値化しようという動きもある。例えば、これまで家庭や地域でやっていた育児や見回りなどをサービス業者に委託すればGDPは増えるものの、家族やコミュニティのつながりが薄れるという視点からGNH的にはマイナスに働くと考えられる。

日本を含めた世界の国々の子供にアンケート調査したところ、日本の子供たちの生活に対する満足度/将来への期待値が途上国を含め他国の子供たちより極端に低かった結果が出たという。将来を担う子供たちが明るい未来を描けない社会は非常に問題だ。大人のビジネス社会でも最近は従業員に求められる生産性向上の要求が加速し、経済的な勝ち負けを決めたがる風潮のなか、競争はより激しく、格差は広がりつつある。これらの事実は今まで日本の良い部分も切り捨て欧米を模倣することで経済的豊かさを求めてきたが、どこかで方向転換をする必要性を示唆するものとの見方はできないだろうか。

折しも、米国発の金融危機が日本も含め世界的に暗い影を落としている。GDP的にはマイナス影響の大きい出来事ではあるが、これまでの行過ぎた資本主義(更にいえば、金融至上主義)に対する警鐘を鳴らしているようにも筆者には感じられる。バブルの崩壊や今回のような未曾有の世界経済危機は人間の原点に回帰する為の好機といえるのではないだろうか。人間というものは物事の両極端を経験することによって初めて全体を理解できるのかもしれない。これを機会に日本版の新たな「豊かさ」を追求したいものだ。やはり「自分は幸せだ」と国民の9割以上が言えるような国で暮らしたいと思うのは筆者だけではないだろう。

Written by Natural Spirit

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