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サマータイム(夏時間)の思い出を通して -S.T-

2009年03月06日

先週の東京はすっきりしない天気が続いた。毎日雨傘が必要で日差しが殆どなかった。湿度は低く土砂降りがなかったことは幸いだが冬の雨はつらい。今週の天気も曇りがちが多くなんとなく憂鬱な気分になるのは筆者だけだろうか。季節の変わり目でもあり天候は不安定なものの、毎日着実に日が長くなっている。もう少し経てば桜が咲く。企業も学校もリスタートの季節が来ると思うと重苦しい天気が続くが何故か心が躍る。

昔ロンドンに3年間駐在した。ロンドンの天気は年を通じて不安定で毎日必ず弱い雨があり薄暗い日が多い。先週の東京の天気がかなり共通するような気がした。ただこの時季は一日の日照時間が3?4時間という冬至の頃を経た後だけに、毎日、日が長くなることに格別の喜びがあったように記憶している。イースター休暇が待ち遠しくなる頃でもあり、3月末の日曜に時計の針を一時間巻き戻しサマータイム(夏時間)に入る。この日は一時間延びるから不思議と得をした気分であった。夏時間に入るとその後は加速度的に日が延びた。やがて午後10時過ぎまで日が落ちない6月を迎える。この頃の天気は最も安定する。仕事を終えゴルフに出かけたこと、パブで遅くまで友人と過ごした当時が今も懐かしい。

日が長くなるとピカデリィ周辺の繁華街や市内の公園は買い物や食事、散歩をする人々で夜遅くまで賑わっていた。仕事を終えた開放感と長い日差しが人々をアクティブにさせるのだろう。夏時間はマクロで一定の経済効果を生んでいたような気がした。日本では何故夏時間は実施されないのだろう。夏時間は夏場の長い日照時間を活用し、仕事後の明るい時間を拡げ、その時間を有効に使うことで健康促進、省エネ、環境負荷軽減、景気刺激に繋がるはずである。多くの国で定着しているこの制度が導入されていないことに疑問を感じていた。

このため夏時間を巡る議論に関し調べてみた。一般的に関心が低いのではと考えていたが資料は意外に多い。過去に導入し短期間で廃止した経緯から根強い不信感があること、地球温暖化対策の観点から与党内に導入の動きがあること、賛否がほぼ拮抗すること、などがわかり驚いた。賛成意見は概ね筆者が指摘したことがポイントとなっていた。一方反対意見の中では(1)日本は湿度が高く日没後も家庭の冷房需要強いため省エネ効果は疑問、(2)通勤時間が長く残業の多い事情を踏まえれば「明るい時間の帰宅」など不可能、(3)日没時刻が遅くなり未成年者の非行が助長される懸念、(4)金融や医療機器などコンピュータを利用するシステムにトラブルが発生するリスクがある、などが目を引いた。

なんとなく賛成派であったため敢えてディベート的思考法で反対側の立場に立ち反対意見を注意深く拾ってみた。上記以外の反対意見もごもっともと思えることが殆どで、慎重な議論が必要であり簡単に導入が決められる話ではないと気が付いた次第である。先週の天気はロンドンでの短い夏、夏時間の楽しい記憶を呼び起こすとともに自分と反対の立場に立って考えてみることの重要性を再認識させてくれた。今夏は自分だけで夏時間を導入してみたら面白いかもしれないと考えている。
 
Written by S.T

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