私は保守的な人間であるからして、これでいいやと思うとずっとそれに固執する。飲み物では小岩井コーヒー牛乳だ。日中に買う飲み物といえばこれしかない。たまにコカ・コーラへ浮気するが、年に2度あったら多いほうである。
値段は110円。100円硬貨と10円硬貨が1枚ずつあれば足りる。おつりを受け取る手間はなく、レシートを渡されることもない。ところが、この前、ちょうど両方ともなかった。仕方ないので、コンビニではめったに働かない夏目漱石の出番となった。
人間誰しも機嫌の悪いときがある。110円の買い物で1,000円出すなよと思ったのかもしれない。非常に無造作に手渡されるお釣りの硬貨。あまり気分の良いものではない。その瞬間、何か変だと思った。でも、少し頭に来ていたし、後ろもつかえて予定も押していたので確かめずにおいた。
その日、電車に乗るために160円切符を買おうと硬貨を投入していると、なぜか返される10円玉がある。
・・・よくみたら、50セント硬貨だ、これ。
たぶん、あの時のはず。しかし、違うかもしれない。でも、どこで混じったのだろうか。そもそも、どこからやってきたのだろうか、この硬貨は。
1ドル90円とすれば50セントは45円だ。円に換えれば10円より得だ。しかし、面倒なので換えには行っていない。かといって行き場所もなく小銭入れの中に納まっている。間違って使わないようにするのが日々のミッションとなっている。
円高が進行して企業の業績を圧迫しているこの現状にあって、この50セントの価値はいくらになるのだろうと小銭入れを覗く度に思い当たるのだが、そのたびに気が滅入る。
Written by 鈴木 崇生