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バベルの塔 -Julien-

2009年01月23日

少し前の話になるが、久しぶりに映画館へ足を運んだ。成人の日ということでタイトルに「20」がつく映画を選んだわけではないが、「K-20 怪人二十面相・伝」を観た。この映画を選んだのは団塊の世代だからといって怪人二十面相に特別のノスタルジーをおぼえた訳ではなく、たた単純に松たか子のファンだという理由によるものである。上映時間は2時間を越えるものであったが、時間の長さを感じさせない面白い映画であった。「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズで驚きの映像を作り出したプロダクションの作品であり、CG、VFXを駆使した映像は素晴らしく、映画はハリウッドだけではないと溜飲が下がる思いであった。

第二次世界大戦を回避した1949年の日本の架空都市、華族制度が残り、階級制度が厳しい格差社会である帝都が舞台。怪人二十面相に仕立てられた貧民階級のサーカス団の軽業師・金城武演じる遠藤平吉と財閥令嬢・松たか子演じる羽柴葉子が協力して、有名な発明家 ニコラ・テスラが提唱した電力無線伝送という夢の装置(テスラ)を手に入れようとする本物の怪人二十面相と戦うのが粗筋である。
テスラは羽柴財閥が開発に成功したが、巨大なエネルギー装置であると同時に実は、強力な破壊兵器になるため封印されている。その隠し場所を解く鍵は「バベルの塔」の絵のなかにある。本物の怪人二十面相はこれを手に入れ権力を握り、世界を変えようと目論むが平吉と葉子は世界を破壊しうる危険な装置を壊そうと火花を散らすものである。

この映画は単なる娯楽作品ではなかったのだ。松たか子の魅力に惑わされたが、「格差社会問題」、原子力に通じる「クリーンエネルギーとて兵器に変わる」、そしてバベルの塔に込められた「人間の驕り・慢心が世界を破壊する」、とのメッセージに富んだ社会派映画と感じたのは私だけだろうか。特に気になるのは、中国や中東でブームになっている超高層ビルの建設ラッシュである。

慢心して神に近づこうとして高い建造物を建てると天からの鉄槌が下るとの現代社会への警鐘ではないだろうか。今回の100年に一度の金融危機はまさに、そう思えてならない。救いは、4月2日にロンドンで開催される「K-20」ならぬ「G20首脳会談(第2回金融サミット)」ではないだろうか。言葉の違う20カ国が一堂に会し世界大恐慌回避の対策を練るのは「逆バベルの塔」になるのではないかと期待している。

Written by  Julien

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