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18年ぶりの個人(現物)投資家買い越し-K.S-

2008年12月19日

本年9月のリーマン経営破たん以降、あるいは日経平均株価が1万円の大台を割った10月以降、外国人投資家売り・国内の個人投資家(現物)買いの構図が鮮明になっている。

証券取引所から発表されている投資部門別売買動向(三市場、一部・二部合計)を見ると、本年10月には金額ベースで外国人投資家が約1兆円売り越す一方、個人の現物買い越し額は1兆円に達し、11月も外国人投資家が1兆円を上回る売り越しとなり、個人の現物買い越しは3,000億円を超過している。12月に入っては、これまでほど一方的な売り越し・買い越しにはなっていないものの、年間ベースでは外国人投資家の売り越し、個人現物投資家の買い越しとなることが確実な状況となっている。

このまま外国人投資家が売り越しとなると2000年以来8年振りとなる。今回の外国人投資家売りが一般に言われているようにファンドの解約売りが主体ならば、峠は越えているはずだ。国内の年金等のファンドの決算は3月が多く、ファンドが解約になる場合、2月ぐらいには決定され3月中旬までには処理を全て終えていたと思う。外国ファンドの決算は12月が多いらしいが、クリスマス休暇を考えると、ファンドの解約に対応した売りがこれから出てくるとは考え難い。ただし、ファンドの解約と言う事情ではなく、日本の株価水準が高い(為替も重要なファクター)とか投資魅力がないと判断すれば別だが。来年1月の外国人投資家売買動向は1年間の相場を考える意味で注目ポイントの一つといえよう。

一方、個人の現物投資家が買い越すと1990年以来18年振りとなる。相場の天底を判断すると信じられている?多くの指標の中、月間ベースで個人投資家が買い越せば(信用取引を除いた現物株であることが重要)底値というのは私も信じてきたひとつの指標で、何度か参考にさせてもらった。ただし、従来(例えば1980年代まで)と比べると月間ベースの買い越しが頻繁に見られるようになって、指標の有難みが薄れてきた。分析をした訳ではないが、信用取引の金利が低くなったことやデイトレーダーが増えてきたことが要因のひとつで、信用取引をする短期間で効果を狙う投資家と、長期投資をすると考えられた現物投資家との境界が従来に比べるとなくなっているかもしれない。それでも、2003年の大底などそれなりに当たっているように思う。

本年10月の日経平均株価7,000円近辺の水準がもし大底になったとしても、個人の現物投資家が上手で、外国人投資家が下手だという訳では決してない。しかし、同じような相場観を持ち、同じような資金事情の投資家が売買の大半を占める状況はリスクが高く、ふところが広がると言う意味では、個人の現物投資家が参加している状況は心強い。

もうここまで下がったら大丈夫と思って買えば損をし、まだ下がると思って買わないでいるとタイミングを逸したというのはほとんど全ての投資家が経験しているだろう。このような波乱状況のなかで、個人の現物投資家は過去に見られないほど国内株式を買い越している。「もうはまだなり、まだはもうなり」は頻繁に使われる相場格言で、いまさら説明の必要はないだろう。ただ、江戸時代の天才相場師、「酒田五法」で有名な本間宗久翁は、もうはまだなり、まだはもうなりに続いて、次のようなことも言っている。

「もうはまだなり、まだはもうなりということあり。ただし、数日もはや時分と思い取りかかりたるに、見計い悪しければ間違いになるなり。まだまだと見合わせ居るうちに遅るることあり。」(宗久翁秘録)

Written by K.S

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