先日、親戚の墓参りに茨城県結城市を訪れた。
湘南新宿ラインで栃木県の小山まで行き、そこから水戸線に乗り換える。水戸線は初めての乗車だったが、住宅街の中をのんびりと走っていた。乗ったのはたった2駅だったが、車内で偶然出会ったらしい乗客同士が挨拶を交わす場面も見られた。
結城駅で降り、ここからは目的地の寺まで徒歩で向う。
これまで何度か結城を訪れたことがあったが、それまでは車で行っていたので道はなんとなくしか憶えていない。駅前で地図を確認する。すると、結城にはたくさんの寺社があることを知った。昔は城下町だったことを思い出し、かつての繁栄の面影を感じた。そういえば道路も入り組んでおり、毎回方向感覚を失って、道に迷いながらあっちだこっちだ言いながら苦労して寺まで辿り着いていた。これもまさしく城下町の名残だろう。
さて、目的の墓参りを終え駅へ戻る途中、観光物産センター(正式名称は失念)へ入った。結城市といえば結城紬。結城紬で作った小物類や着物の展示、機織の実演が行われていた。
館内を案内してくださったセンターの方のお話がとても興味深かった。
結城紬は現在、手織りのものと機械織りのものとあり、手織りのものは一反30万円ほど、都内で買うと倍以上の値段になることもあるそうだ。一反を仕上げるのに工程は約20、期間は数カ月かかり、多くが分業で行われているという。職人さんのほとんどが高齢の方で、賃金は時給換算するとなんと100?200円という「ほぼボランティア状態」なのだそうだ。その職人さんたちも、多くの方があと十数年もすれば仕事ができなくなってしまう可能性が高いが、若い人でやりたがる人はほとんどいないとのお話だった。
もしこれが企業間のビジネスだったら、これだけの人手と技術と時間がかかって、30万円では実現され得ない話だと思う。
今まで高いイメージを持っていたが、着物って実は安いのかも知れない。ボランティア状態には賛成できないが…。
それにしても、展示コーナーでは独特の風合いに感動し、また驚きもした。中にはステージ衣装としても使えそうなツートンカラーの斬新なデザインのものもあり(しかし派手すぎず粋な感じ)、結城紬のイメージが良い意味で壊れた。
結城紬は高級品だが、正式な礼装としては認められていない。披露宴などハレの場で着られる一張羅にひとつあつらえてもらうのはどうかと瞬間思ったが、残念ながら適わない。
そもそも実質的な安さを知ってもとても決断できる値段ではなく、その代わりというわけではないけれど、結城紬製コースターを購入し、日々愛用している。
Written by 江戸桜