「どちらまで行かれるの?」
先日高尾山に登ったときのこと。小柄な初老の男性が声をかけてくれました。
初めてのルートに挑戦したものの思っていた以上の道のりで分かれ道も多く、日没までに無事下山できるか不安になっていたところでした。
「△△峠を通って○○まで行くつもりです」
じゃあ途中まで同じルートだね、ということでしばらくお話をしながら一緒に歩くことになりました。
シワが深く一見気難しそうにみえるのですが、笑うと破顔一笑、愛嬌たっぷりで、標高差のある行程も長く感じることなく楽しい時間を過ごすことができました。
袖触れ合うも多少の縁とは言いますが、実際都会での日常の中で見ず知らずの人と言葉を交わす機会はそうあるものではありません。ましてや心の通った交流となると尚更です。
言葉の交流は、山登りの魅力の一つなのかもしれません。
「こんにちは」「ありがとうございます」「お気をつけて」
険しい道のりであればあるほど、すれ違いざま、追い抜くとき抜かれるとき、何かしらの言葉を交わします。
小1時間ほど歓談しながら分かれ道までくると、
「またどこかの山でお会いしましょう」
そう言い残すや、一陣の風のように颯爽と山道へ去っていきました。
その時の思いを和歌にのせて最後に一首
『秋山や 風吹き心 揺らすのは
山の木々の葉 人の言の葉』
Written by CranberryJam