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物価上昇は和らぐ方向 -K.S-

2008年09月19日

身近な食料品や日用品の価格が上昇しているため、消費者物価指数が示す以上に生活実感では物価の上昇が厳しい。しかし、消費者物価上昇率のピークが近づいたと考えられる。一度値上げをした食料品、日用品、耐久消費財などの最終製品の価格は容易には下がらないものが多い。そのため、物価が落ち着いたと消費者が実感するまでにはもう少し時間がかかるかもしれないが、それほど遠くないと考える。

半年ほど前に、原材料価格が上昇する一方最終材価格が低迷する「川上インフレ、川下デフレ」状況も限界に近づいていたため、やがて最終製品の値上げが相次ぎ、消費者物価指数が予想外に上昇するかもしれない、と書いた。8月29日に発表された7月の全国消費者物価指数は前年同月比2.4%の上昇と16年1カ月振りの高い上昇(消費税増税の影響除く)となっている。日銀の物価安定の目安「0?2%」も上回ってきた。相変わらずエネルギー関連の上昇の影響が大きいが、お菓子や乳製品、日用品などの最終製品の価格が上昇しているのが特徴となっている。

ただ、消費者物価指数が取り敢えずピークアウトする時期は遠くないと考えている。全国物価の先行指標となる東京都区部の8月の消費者物価指数は前年同月比10カ月連続の上昇となっているものの、上昇率は7月に比べて0.1ポイント縮小。9月10日に発表された8月の国内企業物価指数は、前年同月比7.2%の上昇、前年同月比では54カ月連続の上昇で第2次オイルショック時並みの高水準ながら、前月と比べ伸び率は縮小。市況を反映するまでに時間がかかる品目が多いため(例えばナフサ価格は原油価格が急落しても2?3カ月ほどのタイムラグがあるためまだ高水準)、7月中旬以降の原油(約2カ月で3割の下落)や非鉄金属等の資源価格、穀物価格(広義ではエネルギー関連とも言える)の急落の影響はまだ小さい。しかし、ガソリン価格は市況連動に近い値決め方式に変更されたことなどから8月以降に下げが加速しており、確実に消費者物価指数の調整につながるだろう。

これほど短期間に原材料価格が乱高下したことも、また製品価格と原材料価格の動向に大きなタイムラグが生じたのも珍しいため、企業利益ベースでは興味深い現象が見られる。本年前半の原材料価格高に対して値上げを実施していた企業の中に、足元の原油、穀物、スクラップ価格等の下落によりスプレッド(製品価格と原材料価格との差)が拡大して思わぬ利益がでている企業が散見される。最近の新聞紙上で掲載されたものの中でも、鉄スクラップ価格の急落で電炉メーカーの利益急増、段ボール古紙価格の下落で段ボールメーカーの利益急増など。4-6月は原材料価格高に製品値上げが追いつかず、総じて業績が悪化していた。しかし、製品値上げ浸透如何であるものの、7-9月は在庫評価損益を除いた実質ベースで利益が改善している市況関連企業は多い。世界的な金融不安の台頭や景気の悪化観測等から、個別企業の足元の好材料が積極的に評価される状況にないかもしれないが、市場が落ち着けば見直される局面があると考えている。


Written by K.S

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