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安易な「株式持合い」「買収防衛策導入」に警鐘? -K.S-

2008年07月04日

6月中旬に、2007年度の株式分布状況調査(証券取引所調べ)が発表された。
投資部門別の株式保有比率(金額ベース)を見ると、事業法人が前年度比プラス0.6ポイントの21.3%と3年振りに上昇した一方、外国人投資家は同マイナス0.4ポイントの27.6%と5年振りに低下している。
1980年代後半の金融バブル期には、株式持合いを含めて事業法人の株式保有比率が約30%、金融機関約45%、個人投資家約20%、外国人はわずか5%程度に過ぎなかった。バブル崩壊以降、持ち合い解消を含めて事業法人や金融機関の株式保有比率が急低下、個人投資家は約20%程度で横ばいが続く中、ほぼ一貫して株式保有比率が上昇してきたのが外国人投資家であるのは言うまでもない。
しかし、2007年度の投資部門別株式売買状況では、1年間で事業法人が約2兆5,000億円を買い越したのに対して、外国人投資家は約1兆3,000億円売り越している。
今回、外国人投資家の株式保有比率が低下したといっても、わずか0.4ポイントであり、特にこれまでの大きなトレンドが変わったとはいえない。また低下したのは、サブプライム問題等に起因して世界的に株価が下落したことが主要因だと思われる。しかし特に昨年以降、日本企業の「株式持合い」や「買収防衛策導入」に外国人投資家や年金投資家等から批判的な言動が目立つようになったことがやや気になる。

野村証券金融経済研究所調べによると、2007年度の企業の株式持合い比率は前年度比0.3ポイント増の12.3%と2年連続増加した模様。買収防衛を意識して、また「モノ言う株主」の脅威に対する経営者の危機感から、企業が持合いを強化したためとみられる。ただ、外資系ファンドなどは、経営者の保身との批判を強めており、持合いの拡大は外国人投資家の日本株離れを助長する恐れもあると警戒している。市場では日本企業の持合い慣習に厳しい批判の目が向けられるようになったと言えよう。

一方国内では、6月に行われた株主総会において企業年金連合会は、買収防衛策の導入あるいは継続議案104件について40件に反対したと発表。07年は、136件の買収防衛議案に対して2件しか反対しなかったことと比較して、反対票が大幅に増加している。スティール・パートナーズに金銭を支払ったブルドックソースの買収防衛策発動を最高裁が適法と判断したことを踏まえ、多くの企業が経済的対価の支払い規定を含んだ買収防衛策を提案していたが、企業年金連合会は、買収防衛策に対する株主議決権行使基準を本年3月に改訂。買収者に経済的対価を支払う規定を盛り込んだ買収防衛策には原則反対することを決めていたため、新基準に抵触するケースが急増した。

「株式持合い」や「買収防衛策導入」の良し悪しを簡単に決め付ける訳にはいかないが、外国人投資家や年金、投資信託等のいわゆる「モノ言う投資家」の構成比がバブル期と比較して圧倒的に高くなっており、「株式持合い」や「買収貿易策導入」が従来以上に合理性が求められるようになった。

Written by K.S

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