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競馬専門家と証券アナリスト -Zimmy-

2008年06月27日

月に1回、土日の昼下がりに近所の床屋さんで散髪している。店主が競馬好きで、テレビにはテレビ埼玉のワイド競馬中継が流れている。私は、競馬については年末の有馬記念にお付き合いで2?3千円程度の馬券を買う素人だが、何度となく競馬中継を見ているうちに感じたことがある。それは、テレビでレースやパドックの解説をされているような競馬専門家の方々と我々証券アナリストは似ている部分がきわめて多いことである。以下、そうした点をいくつか挙げてみたい。
 
一つは、どちらの職業も将来予想を生業にしていることである。証券アナリストは一般投資家(もしくはプロの機関投資家)の方々に担当銘柄の業績や株価パフォーマンスを予想する。一方、競馬専門家は競馬ファンに対し、レースの勝ち馬を予想する。競馬ファンは専門家の印(◎や○、▲、△、注)を参考にして、勝ち馬投票券(以下、馬券)を購入することになる。
 
アナリストの場合は(買い推奨の)予想が外れても、そのうち株価が戻るということはあるが、馬券の場合は即座に結果が出る分、競馬専門家の責任の方がはるかに重い気がする。これは所属する競馬専門誌の売上に直結するからであり、例えば今週末の開催で某専門誌のX氏が12レース中9レースを本線で的中させたとなれば、翌週の某専門誌の売上が急増するのは確実と思われる。
 
二つは、証券アナリストも競馬専門家も予想を行うに当たって、多様な切り口を用意していることだろう。アナリストは定性的、定量的な分析を駆使してレポートを書くが、競馬専門家の先生方も(1)血統分析、(2)過去のレース分析、(3)追い切り分析、(4)調教師、調教助手への取材、(5)騎手への取材、(6)当日の馬体重増減、(7)パドックの気配、(8)返し馬チェック、などを総合して判断されているようだ。
アナリストで言えば、血統や過去のレース分析はB/SやP/L分析、調教師への取材はIR担当者の取材に相当するのではないか。実際、テレビで解説されている柏木集保さんや星野英治さんのお話しは、インプットされておられる知識が豊富なので、ものすごく知的かつ説得力がある。
 
三つは、両者ともに予想に際して思い切りが必要ということではないだろうか。証券アナリストはレポート執筆時に、その企業がいいのか悪いのか、株価が上がるのか下がるのか、大胆な業績予想ができないか、など歯切れが良く、メリハリの効いた予想が求められるが、これは競馬専門家も同じだと思う。△はともかく、◎や○、▲は1頭にしか付けられないからである。同レベルの馬が複数いて本命馬を決めかねる場合は、断腸の思いでもう一方の馬を見切ることになるのだろう。
 
私は、できる証券アナリストは競馬専門家をやっても成功するし、たぶんその逆もあり得ると思っている。この推測には確信の◎を打ってもよい。これまで見てきたように「予想する」ということの本質的な部分は全く同じだからである。
 
ワイド競馬中継のウェブサイトに前述の柏木さんと星野さんが紹介されていた。そのなかで柏木さんは、「いちばん戒めなくてはならないのは、初心者の人にもわかりやすく説明して理解してもらうのが”プロ”なんだということ」と述べておられる。一方星野さんは、「この仕事をしていて良かったと思うのは予想が当たったとき。配当の大小に関わらず、この快感があるから続けられる」とコメントされている。アナリストの端くれの私としては、お二人のご意見にただただ頷くばかりである。

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