週に何回かは参拝する靖国神社。
午前10時とはいえ日差しの厳しい中で、喫煙所の清掃を80歳前後の女性が行っていた。
吸殻入れから吸殻を捨て、水を入替えて、雑巾で拭く。それだけの作業ではあるが、吸殻の溜った箱は(水もはいっているので)重く、老婆にとっては決して楽な作業ではないだろう。額からは汗が滴っていた。
手を貸してあげることは、この人には仕事が出来ない、という烙印をかえって押すようにも思えて、ただ見守っていた。
このくらいの年齢になっても働かなければならない。これが日本の現状なのだろう。それが自分の母親でなかったことがせめてもの救いなのかもしれない。
自販機でポカリスエットを買い、「熱中症に気をつけて!」と言って差し出したら、「ありがたくお気持を頂きます」と笑った彼女の口の中には、もう半分くらいしか歯がなかった。
まだ8月半ば過ぎだというのに、蝉の声はもう殆ど聞こえない。
by wildernesswolf